虫垂炎という病気は、往々にして空気を読まないものです。仕事が終わった後の深夜や、家族でゆっくり過ごしている週末に限って、あの独特の痛みがやってくることがあります。近所のクリニックが閉まっている時間帯に「虫垂炎は何科に行けばいいのか」とパニックになるのは、誰にでも起こりうることです。こうした緊急時にまず考えるべきは、一般的な当番医ではなく、二次救急指定を受けているような中核病院への相談です。救急病院の多くは複数の科の医師が当直していますが、必ずしも外科医が常に院内にいるとは限りません。そのため、受診する前に必ず電話で状況を説明することが不可欠です。「右下腹部が痛く、虫垂炎を疑っている」と明確に伝えることで、病院側は適切な受け入れ準備を整えることができます。もし外科の医師がいない場合でも、内科の医師がいれば血液検査や点滴による応急処置、そして画像検査を行うことは可能です。そこで診断を確定させ、翌朝一番で外科へ繋ぐというプロセスも、痛みと不安を解消するためには非常に有効です。また、自治体が運営している救急電話相談などを利用して、現在どの病院に消化器の専門医が待機しているかを確認するのも良い方法です。最近では、スマートフォンで地域の病院のリアルタイムな空き状況や専門外来を確認できるアプリも普及しています。こうしたツールを日頃から把握しておくことが、いざという時の助けになります。注意が必要なのは、夜間の痛みを我慢して朝まで待とうとすることです。虫垂炎は進行が早く、数時間放置しただけで虫垂が穿孔、つまり穴が開いてしまい、腹膜炎を引き起こす可能性があります。腹膜炎になると治療期間は大幅に長引き、命の危険さえ伴います。ですから、時間外であっても「何科か」にこだわりすぎず、まずは救急対応が可能な総合病院を目指してください。たとえそこが専門外であっても、適切な医療機関への転送など、プロの判断を仰ぐことができます。夜中の一人歩きは危険ですので、動けないほどの痛みであれば躊躇わずに救急車を呼ぶことも検討しましょう。救急隊員は、虫垂炎の可能性を考慮した上で、最も適切な診療科がある病院を選定してくれます。緊急時こそ、自分一人で抱え込まず、社会的な医療システムを賢く利用することが、最悪の事態を防ぐための鍵となります。
夜間や休日に虫垂炎が疑われる際の診療科選びのコツ