もう数年前のことになりますが、仕事の締め切りに追われていた時期、私は無意識に爪の周りの皮をむしる癖が出ていました。ある朝、左手の人差し指に違和感を覚え、鏡を見ると爪の付け根が少しだけ赤くなっていました。最初はただの深爪のような痛みだったので、市販の絆創膏を貼って過ごしていましたが、二日経つとその赤みは紫色を帯び、パンパンに膨れ上がってしまいました。触れるだけで激痛が走り、キーボードを打つのも困難な状態。これが世に言う「爪周囲炎」だと確信した私は、すぐに近所の皮膚科を受診しました。待合室で待っている間も、指先が熱を持ってズキズキと疼き、生きた心地がしませんでした。診察室に入り、医師に指を見せると、すぐに「あぁ、かなり膿が溜まっていますね」と言われました。皮膚科の先生は、まず患部を丁寧に消毒し、非常に細い針を使って膿が溜まっている部分の皮膚をわずかに突きました。痛みがあるかと思いきや、圧迫されていた膿が外に出た瞬間、それまでの重苦しい痛みが嘘のようにスッと引いていったのを覚えています。先生の説明によれば、爪周囲炎は細菌感染によるものなので、まずはその原因となる細菌を叩くことが重要であり、そのためには皮膚科での内服治療が基本となるとのことでした。処方されたのは、抗生物質と炎症を抑える薬、そして細菌の増殖を抑える塗り薬でした。皮膚科を受診して良かった点は、爪の変形や今後の再発防止についても詳しく教えていただけたことです。爪周囲炎は一度治っても、爪の切り方や手の洗い方などの習慣が変わらなければ再発しやすく、慢性化すると爪自体が凸凹になったり剥がれたりすることもあるそうです。また、水仕事を頻繁に行う人がかかりやすい「慢性爪周囲炎」というタイプもあり、こちらは細菌ではなくカンジダなどのカビが原因になることもあるため、皮膚科での正確な検査が不可欠なのだと教わりました。もしあの時、面倒くさがって病院に行かずに自力で治そうとしていたら、もっとひどい化膿を起こして指全体が腫れ上がる「ひょうそ」に進行していたかもしれません。爪周囲炎は何科に行けばいいのかという迷いは誰にでもあると思いますが、皮膚の専門家である皮膚科は、最も身近で頼りになる窓口でした。指先の小さなトラブルが、実は重大な感染症の入り口であることもあるため、自己判断を捨てて専門医を頼る勇気が、健康な指先を守るためには不可欠なのだと、今の私は自信を持って言えます。