救急科の現場では、週末や忘年会シーズンになると、二日酔いの症状を訴えて来院される患者さんが急増します。私たち医師にとって、二日酔いの患者さんを診察する際に最も重視するのは、その症状が本当にアルコールだけによるものなのか、それとも生命を脅かす合併症が隠れていないかを見極めることです。患者さんは単なる二日酔いだと思っていても、詳しく診察すると、激しい嘔吐によって食道粘膜が裂けるマロリーワイス症候群を起こして吐血していたり、過度のアルコール摂取が引き金となって急性膵炎を発症していたりするケースが少なくありません。膵炎は激痛を伴い、最悪の場合は命に関わる重篤な病態です。また、アルコールには利尿作用があるため、重度の脱水によって血液がドロドロになり、心筋梗塞や脳梗塞を誘発している可能性も否定できません。私たちは、まずバイタルサインを確認し、意識レベルや腹部の圧痛、脱水の程度を迅速に評価します。その上で、最も有効な処置として点滴を開始します。点滴の内容は、水分と電解質の補給を基本とし、アルコール分解で生じる乳酸アシドーシスを補正するための成分や、低血糖を防ぐための高濃度ブドウ糖を配合します。患者さんの中には「自業自得だから病院に来るのが申し訳ない」と仰る方もいますが、私たちは苦痛を取り除くのが仕事です。特に、歩行が困難であったり、言葉が不明瞭であったりする場合は、脳のむくみや電解質異常による神経症状が出ているサインですので、一刻も早い医療介入が必要です。診察室で点滴を受けながら顔色が戻っていく患者さんの姿を見るのは、救急医としても安堵する瞬間です。治療後は、今後の飲酒習慣についてのアドバイスも行います。二日酔いを繰り返すことは肝臓だけでなく脳や血管にも微細なダメージを蓄積させるため、自分の適量を知ることの重要性を説きます。病院は、単に今ある痛みを取るだけの場所ではなく、自分の体質や限界を知り、今後の健康維持について考えるきっかけの場でもあります。無理をせず、早めに医療機関へ相談することが、重大な事故を防ぐことに繋がるのです。