病院の受付や救急外来でよく受ける質問に「何度から受診すべきですか」というものがあります。高熱の定義である三十八度という数字は一つの目安にはなりますが、現場の看護師としてお伝えしたいのは、数字そのものよりも「その熱を体がどう受け止めているか」という観察の重要性です。大人の場合、三十八度を超えていても水分がしっかり摂れていて、ある程度眠れているのであれば、一晩様子を見てから翌朝の受診でも間に合うことが多いです。しかし、これが三十九度、四十度となると、脱水のリスクや意識障害の可能性が出てくるため、注意が必要です。特に判断の基準にしていただきたいのは、熱以外の症状です。激しい頭痛、首の硬直、呼吸の速さ、あるいは水分を全く受け付けないほどの嘔吐がある場合は、数字が何度であってもすぐに医療機関を訪れるべきです。また、解熱剤の使い方についても知っておいていただきたいことがあります。熱を無理やり下げることが常に正解とは限りません。熱は体が戦っている証拠ですので、本人が比較的楽に過ごせているのであれば、あえて解熱剤を使わずに様子を見るという選択もあります。逆に、熱のせいで一睡もできない、食事が全く喉を通らないという状況であれば、解熱剤を使って体を休ませてあげることが、回復への近道となります。何度からが高熱で、何度からが危険かという絶対的なルールはありませんが、自分の平熱よりも二度以上高い状態が続くときは、体がかなり負荷を感じていると考えてください。高齢者や持病がある方の場合は、三十七度台であっても全身状態が急激に悪化することがあるため、数字を過信せず、普段との様子の違いを最も重視していただきたいのです。例えば、いつもより言葉が不明瞭だ、ぼんやりしているといった変化は、高熱そのものよりも緊急性が高い場合があります。私たちは病院で、患者さんの体温計の数字も見ますが、それ以上に表情や皮膚の乾燥具合、呼吸の音に耳を澄ませています。家庭でも同様に、何度からという基準に縛られすぎず、目の前にいる大切な人が苦しそうかどうか、という直感を信じてください。看護の基本は観察にあります。熱という波を乗りこなすために、まずは冷静に、しかし鋭く、全身の変化を追い続けることが、適切な医療を受けるための第一歩となるのです。
看護師が教える高熱時の受診判断