小児科の診察室で、毎日のように出会うのが、高い熱を出して不安そうな表情を浮かべたお母さんや、お父さんとその赤ちゃんです。特に生後半年を過ぎて初めて出す熱の場合、私たちはまず突発性発疹の可能性を念頭に置きます。しかし、ここには一つ大きなジレンマがあります。それは、熱が出ている真っ最中には、それが突発性発疹であると百パーセント断定できる検査が存在しないという点です。診断を確定させるのは、あくまで「熱が下がった後の発疹」なのです。そのため、医師ができることは、現時点で他に深刻な細菌感染症、例えば髄膜炎や尿路感染症といった早期治療が必要な疾患が隠れていないかを慎重に見極めることです。親御さんに知っておいていただきたいのは、突発性発疹の熱そのものは決して怖いものではないということです。三十九度、四十度という数字に驚かれるのは当然ですが、重要なのは数字よりも赤ちゃんの「様子」です。水分が摂れているか、視線が合うか、あやせば反応があるか。これらが保たれていれば、脳にダメージを与えるようなことはありません。ただし、最も注意すべき合併症は熱性痙攣です。突発性発疹は急激に体温が上昇するため、その変化に脳が対応できず痙攣を起こすことがあります。もし痙攣が起きたら、まずは平らな場所に寝かせ、時間を計り、顔色や目の動きを観察してください。五分以内に収まれば過度に慌てる必要はありませんが、必ず医療機関を受診してください。また、解熱後の不機嫌についても、多くの親御さんが「どこか痛いのではないか」と心配されます。しかし、これはウイルスによる全身の影響や、体内の免疫システムが活発に動いていることによる倦怠感のようなものと考えられており、病的な異常ではありません。むしろ、元気な証拠だと思って、ゆったりと付き合ってあげてください。下痢を伴うことも多いですが、整腸剤などで様子を見ることがほとんどで、無理に下痢止めを使うことは推奨しません。お風呂についても、熱が下がって本人が元気であれば、発疹が出ていても短時間なら入っても構いません。ただし、長湯は体力を消耗させるので避けましょう。突発性発疹は、誰もが通る「成長の通過点」です。私たち医師は、そのプロセスが安全に進んでいるかを確認するガイドのような存在です。心配なことがあれば、いつでも相談してください。でも、多くの場合は、数日後には笑い話になっているはずですよ。