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首のしこり、最初に受診すべき診療科はどこか
ある日、ふと首に手をやった時、これまでなかった「しこり」に気づく。痛みはないけれど、触るとコロコロと動く。あるいは、鏡を見て首筋が少し腫れているように感じる。こんな時、多くの人が「これは何だろう、何か悪い病気だったらどうしよう」という不安と共に、「一体、何科の病院へ行けば良いのだろう?」という疑問に直面します。この問いに対する最も的確な答えは、まず「耳鼻咽喉科」を受診することです。なぜなら、首にできるしこりの原因として最も多いのが、風邪などの感染症に伴う「リンパ節の腫れ」であり、耳鼻咽喉科は、まさにその領域である耳・鼻・喉、そして頸部(首)の病気を専門とする診療科だからです。耳鼻咽喉科医は、首のしこりを診察するプロフェッショナルです。丁寧な問診と触診に加え、必要であれば鼻の奥から細いファイバースコープを入れて、喉や咽頭、喉頭といった、しこりの原因となりうる部位に炎症や腫瘍がないかを直接観察することができます。また、超音波(エコー)検査を行えば、しこりの大きさや形、内部の性状などを詳しく調べ、それが単なるリンパ節の腫れなのか、あるいは嚢胞(のうほう)や腫瘍なのかを高い精度で鑑別することが可能です。もちろん、しこりの原因はリンパ節の腫れだけではありません。甲状腺の病気や、皮膚の下にできる粉瘤(ふんりゅう)、脂肪腫といった良性の腫瘍など、様々な可能性が考えられます。もし、耳鼻咽喉科での診察の結果、甲状腺の病気が強く疑われれば「内分泌内科」へ、皮膚のできものが原因であれば「皮膚科」や「形成外科」へ、というように、専門医が適切な次のステップへと導いてくれます。最初にどこへ行けば良いか迷ったら、まずは首周りの構造を最も熟知している「耳鼻咽喉科」の扉を叩く。それが、的確な診断への最も確実で、安心な近道と言えるのです。
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しこりの精密検査、穿刺吸引細胞診とは?
耳鼻咽喉科や内分泌内科で首のしこりを診察し、超音波(エコー)検査などを行った結果、悪性の可能性が少しでも疑われる場合や、良性か悪性かをはっきりさせる必要がある場合に、医師から提案されるのが「穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)」という精密検査です。少し難しい名前ですが、これは診断を確定させる上で非常に重要な検査であり、外来で簡単に行うことができます。具体的には、一体どのような検査なのでしょうか。穿刺吸引細胞診は、超音波(エコー)でしこりの位置をリアルタイムで確認しながら、採血に使うのと同じくらいの非常に細い針をしこりに直接刺し、注射器で吸引して内部の細胞を少量採取するというものです。この手技により、手術で組織を大きく切り取ることなく、しこりを構成している細胞の顔つき(形態)を顕微鏡で詳しく調べることができ、それが良性細胞なのか、悪性細胞(がん細胞)なのかを高い精度で判断することが可能になります。検査にかかる時間は、準備も含めて十分から十五分程度です。ベッドに仰向けに寝た状態で行い、消毒をした後、医師がエコー画面を見ながら慎重に針を進めていきます。麻酔は、通常は必要ありません。採血の時と同じくらいの、チクッとした痛みを感じる程度です。細胞を吸引している間は、唾を飲み込まないようにするなどの協力が必要になることもあります。採取が終わったら、数分間、穿刺した部分を圧迫して止血し、小さな絆創膏を貼って終了です。検査当日は、激しい運動や飲酒は控えるように指示されますが、入浴や食事は普段通りで問題ありません。採取した細胞は、専門の病理医によって染色され、顕微鏡で詳細に観察されます。そのため、最終的な診断結果が出るまでには、通常一週間から二週間ほどの時間が必要です。もちろん、針を刺すことへの不安はあると思いますが、この検査は、不要な手術を避け、早期に的確な治療方針を決定するために、非常に有益で、体への負担が少ない優れた検査法なのです。
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チクチク、ズキズキする胸の痛み、考えられる原因
胸に感じる痛みが、締め付けられるような圧迫感ではなく、「チクチク」「ズキズキ」といった、比較的表面に近い、鋭い痛みである場合、それは心臓以外の原因によるものである可能性が高いと考えられます。このような痛みは、命に別状のないものがほとんどですが、不快な症状が続く場合は、原因を特定して適切に対処することが大切です。では、どのような病気が考えられるのでしょうか。まず、最も頻度が高いのが、肋骨の周りの筋肉や骨、神経に由来する痛みです。例えば、激しい咳が続いた後に起こる「肋間筋の筋肉痛」や「肋骨疲労骨折」。あるいは、肋骨と胸骨をつなぐ軟骨に炎症が起きる「肋軟骨炎(ティーツェ病)」も、胸の特定の場所を押すと強い痛み(圧痛)が生じるのが特徴です。また、ストレスや疲労が引き金となり、肋骨に沿って走る神経が痛む「肋間神経痛」も、電気が走るような鋭い痛みを引き起こします。これらの場合は、「整形外科」が専門の診療科となります。次に、皮膚の病気である「帯状疱疹」も忘れてはなりません。過去に水ぼうそうにかかったことのある人の体内に潜んでいたウイルスが、免疫力の低下をきっかけに再活性化し、神経に沿ってピリピリとした痛みを引き起こします。通常は、痛みの数日後に赤い発疹と水ぶくれが現れますが、痛みだけが先行することもあり、診断が難しい場合があります。これは「皮膚科」の領域です。また、消化器系のトラブルも胸の痛みの原因となります。胃酸が食道に逆流して炎症を起こす「逆流性食道炎」は、「胸やけ」として知られていますが、人によっては胸の痛みとして感じることもあります。食後や横になった時に症状が悪化するのが特徴で、この場合は「消化器内科」を受診します。さらに、精神的なストレスや不安が原因で、心臓には異常がないにもかかわらず胸の痛みや動悸、息苦しさを感じる「心臓神経症」という状態もあります。これは「心療内科」の領域です。このように、チクチク、ズキズキする胸の痛みは、その背景に様々な原因が隠れています。まずは「内科」を受診し、危険な病気がないことを確認した上で、症状に合わせて適切な専門科を紹介してもらうのが良いでしょう。
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再発を繰り返す魚の目、根本治療は整形外科にあり
皮膚科で痛い魚の目の芯をきれいに削ってもらった。歩く時の痛みもなくなり、これで一安心。そう思ったのも束の間、数ヶ月もすると、また同じ場所に同じような痛みが再発してしまった。そんな経験はありませんか。この、うんざりするような魚の目の再発ループから抜け出すためには、対症療法だけでは不十分です。なぜ、そこにばかり魚の目ができるのか、という「根本原因」にアプローチする必要があります。そして、その専門家こそが「整形外科」なのです。皮膚科医が魚の目という「結果」を取り除くプロであるとすれば、整形外科医は、その「原因」を解明し、取り除くプロです。魚の目やタコができる直接的な原因は、足裏の特定の部位への過剰な圧力です。そして、その異常な圧力を引き起こしているのが、足の骨格の変形や、歩き方の癖なのです。整形外科では、まずレントゲン撮影を行い、足の骨の構造を詳しく調べます。そこで、例えば親指が「く」の字に曲がる「外反母趾」、足の横アーチが潰れて足幅が広がる「開張足」、土踏まずが消失する「扁平足」、あるいは指がハンマーのように曲がってしまう「ハンマートゥ」といった、足の形態異常がないかを確認します。これらの変形があると、本来であれば分散されるべき体重が、特定の場所に集中してしまい、何度削っても同じ場所に魚の目ができてしまうのです。診断がつくと、整形外科では、これらの構造的な問題を補正するための治療を行います。その中心となるのが、「足底挿板(そくていそうばん)」、いわゆるオーダーメイドのインソールの作成です。患者さん一人ひとりの足の形や圧力のかかり方を専門的な機器で測定し、異常な圧力を分散させ、正しい足のアーチをサポートするようなインソールを処方します。このインソールを普段履く靴に入れるだけで、魚の目ができる場所への負担が劇的に軽減され、再発を強力に防ぐことができます。また、正しい歩き方を指導するリハビリテーションや、適切な靴の選び方のアドバイスも行われます。もし、あなたが何度も繰り返す魚の目に悩んでいるなら、一度、整形外科の扉を叩いてみてください。そこには、あなたの足の悩みを根本から解決する道が拓けているかもしれません。
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ヘルパンギーナの妊婦、受診は何科?産婦人科か内科か
高熱と激しい喉の痛み。症状からして、おそらくヘルパンギーナだろう。そう思った時、妊娠中の女性は「かかりつけの産婦人科に行くべきか、それとも症状を専門とする内科に行くべきか」という、受診先の選択に迷うことでしょう。どちらを受診しても間違いではありませんが、それぞれの診療科の役割と、状況に応じた最適な判断基準を知っておくと、よりスムーズで安心な医療を受けることができます。まず、基本的には、妊娠中に何らかの体調不良が起きた場合は、第一に「かかりつけの産婦人科」に連絡し、指示を仰ぐのが最も安全な方法です。産婦人科医は、あなたの妊娠経過を全て把握しており、お腹の赤ちゃんの状態を常に念頭に置いた上で、最も安全な対応を判断してくれます。電話で症状を伝えれば、そのまま産婦人科を受診すべきか、あるいは内科の受診を勧め、その際に注意すべき点を教えてくれるでしょう。また、産婦人科を受診する最大のメリットは、妊娠中でも安全に使用できる薬を処方してもらえることです。高熱を和らげるための解熱剤や、脱水を防ぐための点滴など、胎児への影響を最大限に考慮した治療を受けることができます。一方、「内科」や「耳鼻咽喉科」を受診するメリットは、喉の痛みや発熱といった症状そのものに対する、より専門的な診断と処置が受けられる点にあります。例えば、喉の痛みが本当にヘルパンギーナによるものか、あるいは扁桃炎や他の病気ではないかを正確に鑑別したり、喉に直接薬を塗布するなどの処置を受けたりできる可能性があります。もし、内科や耳鼻咽喉科を先に受診する場合は、必ず受付や問診の際に「現在、妊娠何週目であるか」を明確に伝えてください。これにより、医師は妊娠に影響のない薬を選択してくれます。結論として、理想的な流れは、「まず、かかりつけの産婦人科に電話で相談する」ことです。そこで指示を仰ぎ、必要であれば産婦人科医と連携が取れる内科を紹介してもらう、といった形が取れれば最も安心です。自己判断で医療機関を受診する前に、まずは一番の味方である主治医にコンタクトを取ることを忘れないでください。
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痛みのないしこりこそ要注意?考えられる病気とは
首のしこりに気づいた時、痛みを伴う場合は感染によるリンパ節炎などが多く、比較的心配のないケースがほとんどです。しかし、逆に「痛みを全く伴わないしこり」が、数週間から数ヶ月かけてゆっくりと大きくなっていく場合、それはより慎重な対応が求められるサインかもしれません。痛くないからと放置してしまうと、重要な病気の見逃しに繋がる可能性があります。痛みのないしこりの原因として、まず考えられるのが「良性腫瘍」です。皮膚のすぐ下にできる、柔らかくドーム状に盛り上がる「粉瘤(ふんりゅう)」(アテロームとも呼ばれる)や、脂肪細胞の塊である「脂肪腫(しぼうしゅ)」は、その代表例です。これらは、触るとコロコロと動き、通常は痛みはありません。基本的には放置しても問題ありませんが、大きくなって見た目が気になる場合や、感染を起こして痛みを伴うようになった場合は、「皮膚科」や「形成外科」で摘出手術を行います。また、生まれつきの袋状の構造物が残ってしまい、そこに液体が溜まることでできる「嚢胞(のうほう)」も、痛みのないしこりの原因となります。代表的なものに、首の真ん中にできる「正中頸嚢胞」や、首の側面にできる「側頸嚢胞」があります。これも、感染を起こすと腫れて痛むことがあり、その場合は「耳鼻咽喉科」での手術が必要となります。そして、最も注意しなければならないのが、「悪性腫瘍(がん)」の可能性です。一つは、甲状腺がんや唾液腺がんなど、首にある臓器そのものから発生する「原発性のがん」。もう一つは、口の中や喉、あるいは肺や胃など、他の場所にあるがんが、首のリンパ節に転移してきた「転移性リンパ節」です。がんによるしこりは、石のように硬く、周囲の組織と癒着して動きにくいのが特徴です。また、複数のしこりができたり、声がれや飲み込みにくさといった他の症状を伴ったりすることもあります。もちろん、痛みのないしこりの全てが危険なわけではありません。しかし、「痛くないから大丈夫」という自己判断は絶対に禁物です。大きさや硬さに少しでも変化を感じたら、必ず専門医の診察を受けてください。
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整形外科で行われるばね指の治療法、その全て
指の痛みと引っかかりで整形外科を受診し、「ばね指」と診断された後、具体的にどのような治療が行われるのでしょうか。整形外科での治療は、症状の重症度や患者さんのライフスタイルに合わせて、段階的に行われるのが一般的です。その目的は、腱と腱鞘の炎症を鎮め、腱のスムーズな動きを取り戻すことです。まず、症状が比較的軽い初期段階で行われるのが「保存的治療」です。その基本は、「安静」と「薬物療法」です。医師は、指の使いすぎが原因であることを説明し、できるだけ指に負担をかけないように指導します。痛みが強い場合は、一時的に指を固定するための装具(スプリント)が処方されることもあります。薬物療法としては、炎症を抑えるための湿布や塗り薬、あるいは内服の消炎鎮痛剤が用いられます。これらの基本的な治療で改善が見られない場合、次に検討されるのが「腱鞘内ステロイド注射」です。これは、ばね指の治療において非常に効果的な方法です。炎症を起こしている腱鞘の中に、直接、強力な抗炎症作用を持つステロイド薬を注射します。これにより、腱と腱鞘の腫れが劇的に改善し、多くの場合、注射後数日から一週間で、痛みと引っかかりが嘘のように解消されます。外来で簡単に行える処置ですが、複数回繰り返すと腱がもろくなるリスクもあるため、通常は一、二回の注射で効果が見られない場合は、次のステップを考えることになります。そして、これらの保存的治療を行っても症状が改善しない、あるいは頻繁に再発を繰り返す場合、最終的な選択肢となるのが「手術」です。手術は、局所麻酔による日帰り手術が可能です。手のひらの指の付け根部分を、一センチから一.五センチほど小さく切開し、 thickenedした腱鞘を切り開いて、腱の通り道を広げてあげるという、非常にシンプルなものです。手術時間は十分程度で、腱の引っかかりはその場で解消されます。このように、整形外科では、軽度なものから重度なものまで、ばね指に対する様々な治療の選択肢が用意されています。医師とよく相談し、自分に合った治療法を選択することが大切です。
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ストレスが原因?心臓神経症と胸の痛み
胸が痛くて病院へ行き、心電図やレントゲン、血液検査など、一通りの検査を受けたけれど、「特に異常はありませんね」と言われてしまった。危険な病気ではなかったことに安堵する一方で、「では、この不快な痛みの原因は一体何なのだろう」と、スッキリしない気持ちを抱えている方はいらっしゃいませんか。その症状、もしかしたら「心臓神経症」かもしれません。心臓神経症とは、心臓そのものには器質的な病気がないにもかかわらず、胸の痛みや動悸、息切れ、めまいといった、あたかも心臓病のような症状が現れる状態のことを指します。主に、精神的なストレスや不安、過労、睡眠不足などが引き金となって、心臓の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れることで起こると考えられています。いわば、「心の不調」が「体の症状」として現れている状態です。心臓神経症による胸の痛みの特徴は、狭心症などとは異なり、比較的狭い範囲で「チクチク」「ズキズキ」とした痛みを感じることが多く、痛みの場所が移動したり、数秒で消えたり、逆に何時間も続いたりと、症状が一定しない傾向があります。また、安静にしている時に症状が出やすく、何かに集中していると忘れている、といったこともよくあります。この病気で大切なのは、まず循環器内科などで精密検査を受け、「心臓に危険な病気はない」ということを明確に診断してもらうことです。この「お墨付き」を得ること自体が、患者さんの不安を和らげ、症状の改善に繋がる大きな一歩となります。その上で、症状が続く場合は、「心療内科」や「精神科」が専門の診療科となります。心療内科では、カウンセリングを通じてストレスの原因を探ったり、自律神経のバランスを整えるための生活指導を行ったりします。また、症状が強い場合には、不安を和らげるための抗不安薬や、自律神経の機能を調整する薬などが処方されることもあります。胸の痛みは、必ずしも体の病気だけが原因ではありません。心が発するSOSサインである可能性も視野に入れ、適切な専門家を頼ることが、つらい症状からの解放に繋がるのです。
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風邪と蕁麻疹が同時に、何科を受診すべきか
高熱と咳、そして全身の激しい痒みを伴う蕁麻疹。二つのつらい症状が同時に襲ってきた時、多くの人が「これは内科に行くべきか、それとも皮膚科に行くべきか」と、受診先に悩んでしまうことでしょう。どちらの科も間違いではありませんが、症状の強さや優先順位によって、より適切な選択をすることができます。まず、大原則として、発熱や咳、喉の痛みといった「全身症状」が強く、体全体がつらい状態であれば、最初に「内科」あるいは「呼吸器内科」を受診することをお勧めします。なぜなら、蕁麻疹はあくまで二次的な症状であり、その根本原因である「風邪(感染症)」そのものを診断し、治療することが最優先だからです。内科医は、全身の状態を診察し、風邪の原因がウイルスなのか細菌なのかを判断し、必要であれば抗生物質の処方などを検討します。そして、蕁麻疹に対しても、抗ヒスタミン薬の内服薬などを処方してくれることがほとんどです。つまり、内科では、根本原因と症状の両方にアプローチすることができるのです。一方、「皮膚科」の受診を優先的に考えたいのは、風邪の症状は比較的軽い、あるいは治まってきたのに、「皮膚の痒みや発疹がとにかくひどくて耐えられない」という場合です。皮膚科医は、蕁麻疹の専門家です。発疹の状態を詳しく観察し、それが本当に蕁麻疹なのか、あるいは別の皮膚疾患(多形紅斑など)ではないかを正確に診断してくれます。また、痒みを抑えるための強力な抗ヒスタミン薬や、外用薬(塗り薬)の処方など、皮膚症状を速やかに緩和させるための専門的な治療を受けることができます。もし、市販の風邪薬などを飲んだ後に蕁麻疹が出た場合も、薬剤性蕁麻疹の可能性を考慮し、皮膚科に相談するのが良いでしょう。結論として、選び方のポイントは「どちらの症状がよりつらいか」です。全身がつらければ内科へ、皮膚の痒みが我慢できなければ皮膚科へ。もし、判断に迷う場合は、まずはかかりつけの内科に相談し、必要に応じて皮膚科への紹介状を書いてもらうという流れが、最もスムーズで安心な選択と言えるでしょう。
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その蕁麻疹、風邪薬が原因かも?薬剤性と見分ける
風邪をひいて、市販の総合感冒薬や、病院で処方された解熱鎮痛剤を飲んだ後、急に全身に蕁麻疹が広がった。この場合、その原因は風邪ウイルスそのものではなく、服用した「薬」に対するアレルギー反応、すなわち「薬剤性蕁麻疹」である可能性を考える必要があります。薬は、病気を治すために不可欠なものですが、時に、体にとっては異物として認識され、アレルギー反応を引き起こすアレルゲンとなることがあるのです。風邪の際に用いられる薬の中で、蕁麻疹の原因となりやすいものには、いくつかの種類があります。最も代表的なのが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれるグループの解熱鎮痛剤です。イブプロフェンやロキソプロフェン、アスピリンなどがこれにあたります。これらの薬は、痛みを抑える働きを持つ一方で、一部の人にとっては、アレルギー反応とは異なるメカニズムで直接マスト細胞を刺激し、ヒスタミンを放出させて蕁麻疹(NSAIDs過敏症)を引き起こすことがあります。また、細菌感染を伴う風邪の場合に処方される「抗生物質」、特にペニシリン系やセフェム系のものは、典型的なアレルギー反応としての蕁麻疹の原因としてよく知られています。では、風邪による蕁麻疹と、薬による蕁麻疹は、どうすれば見分けることができるのでしょうか。明確な区別は難しいですが、一つの重要な手がかりは「症状が現れるタイミング」です。薬を飲んでから三十分から一時間以内といった、比較的短時間で蕁麻疹が出現した場合は、薬剤性の可能性が高まります。また、風邪の症状は改善傾向にあるのに、薬を飲むたびに蕁麻疹が悪化する、といった場合も、薬が原因であると疑われます。もし、薬を飲んだ後に蕁麻疹が出た場合は、まずその薬の服用を中止し、速やかに処方した医師や薬剤師に相談してください。そして、原因となった可能性のある薬の名前を正確に記録し、「お薬手帳」に記載しておくことが非常に重要です。その情報が、将来、あなたが安全な医療を受けるための、何よりの”お守り”となるのです。