部屋の隅にぽつんと一つだけ落ちている黒い粒。それがねずみのふんだったとしたら、多くの疑問が頭をよぎるでしょう。「なぜ一個だけなんだろう?」「まだ住み着いてはいないのだろうか?」その答えは、ねずみの生態と行動に隠されています。まず考えられる可能性の一つは、ねずみが偶然、一時的に侵入しただけというケースです。外から食べ物の匂いに誘われて入ってきたものの、すぐに危険を察知したり、めぼしい餌が見つからなかったりして、すぐに出て行ってしまった場合です。その際に、ふんを一つだけ残していったのかもしれません。この場合は比較的軽微なケースと言えますが、一度侵入経路ができたという事実は変わりません。次に考えられる、より警戒すべき可能性は、その一匹が「偵察役」であるというシナリオです。ねずみは非常に警戒心が強い生き物で、新しい場所に進出する際には、まず安全な場所かどうかを探ります。その一個のふんは、偵察に来たねずみが残したマーキングのようなものかもしれません。もしその場所が安全で、餌や水が確保できると判断されれば、仲間を呼び寄せたり、そこに巣を作って繁殖を始めたりする可能性があります。つまり、一個のふんは、これから始まる大規模な侵略の前触れかもしれないのです。この二つの可能性を見極めるためには、ふん以外の痕跡、いわゆる「ラットサイン」を探すことが重要になります。壁際や家具の裏に黒っぽいこすれたような跡(警戒心の強いねずみは壁際を移動するため、体の汚れが付着する)はないか、食品の袋や段ボールにかじられた跡はないか、あるいは天井裏からカリカリという音が聞こえないか。注意深く観察することで、ねずみの活動レベルを推測できます。たった一個のふんでも、それは氷山の一角である可能性を常に念頭に置き、他にサインがないか徹底的に調べることが、被害の拡大を防ぐ鍵となるのです。