階段の上り下りで膝に鋭い痛みが走る、朝、起き上がろうとすると膝がこわばって動かしにくい、スポーツ中に膝をひねってしまった。私たちの日常生活の中で、「膝の痛み」は非常によくあるトラブルの一つです。しかし、その痛みの原因は、加齢による軟骨のすり減りから、スポーツによるケガ、あるいは内科的な病気まで、非常に多岐にわたります。いざ病院へ行こうにも、「一体、何科を受診すれば良いのだろう?」と迷ってしまうのは当然のことです。この問いに対する最も的確な答えは、ほとんどの場合、膝関節とその周辺の骨、軟骨、靭帯、筋肉などの「運動器」を専門とする「整形外科」が第一選択となります。整形外科医は、膝の痛みの原因を診断するプロフェッショナルです。まず、丁寧な問診で、いつから、どこが、どのように痛むのかを詳しく聞き取ります。そして、膝の動きや腫れ、不安定さなどを直接手で触れて確認する「身体診察」を行います。さらに、診断を確定させるために「レントゲン(X線)検査」を行い、骨の変形や骨折、関節の隙間の狭さなどを評価します。これにより、加齢による「変形性膝関節症」や、スポーツ外傷である骨折などを診断することができます。また、靭帯や半月板といった、レントゲンには写らない軟部組織の損傷が疑われる場合には、より詳しい検査である「MRI検査」や「超音波(エコー)検査」が行われることもあります。このように、整形外科では、様々な検査を駆使して痛みの原因を正確に特定し、その診断に基づいて、薬物療法(湿布、塗り薬、痛み止め)、ヒアルロン酸などの関節内注射、リハビリテーション、装具療法、そして手術といった、幅広い治療の選択肢の中から、患者さん一人ひとりに合った最適な治療法を提案してくれます。もし、あなたの膝の痛みが、ケガがきっかけであったり、動かした時に痛むのであれば、迷わず運動器の専門家である「整形外科」の扉を叩いてください。それが、的確な診断と治療への最も確実な近道です。