膝の痛みに加えて、関節が熱を持ってパンパンに「腫れている」場合、それは膝の内部で何らかの強い「炎症」が起きているサインです。この腫れの原因を特定することが、適切な治療への鍵となります。整形外科を受診すると、医師はまず、その腫れが何によって引き起こされているのかを診断します。最も一般的な原因は、「関節液の過剰な分泌」です。変形性膝関節症や半月板損傷などによって、膝関節の内部に炎症が起きると、それを鎮めようとして、あるいは潤滑を保とうとして、関節を包む滑膜という組織から、通常よりも多くの関節液が分泌されます。これが、いわゆる「膝に水がたまる」状態(関節水腫)です。この場合、整形外科では、注射器で関節液を抜き取る「関節穿刺」を行うことがあります。関節液を抜くことで、圧迫による痛みが軽減され、また、抜いた液体の色や性状を調べることで、診断の大きな手がかりとなります。例えば、黄色く透明な液体であれば変形性膝関節症、血液が混じっていれば靭帯損傷や骨折などの外傷、白く濁っていれば感染や痛風が疑われます。次に、注意が必要なのが「感染」による腫れです。傷口などから細菌が関節内に侵入して起こる「化膿性膝関節炎」は、激しい痛みと腫れ、高熱を伴い、緊急で治療が必要な状態です。関節液は白く濁った膿(うみ)のようになり、放置すると関節が破壊されてしまうため、抗生物質の投与や、場合によっては手術による洗浄が必要となります。また、血液中の尿酸値が高い人がかかる「痛風発作」も、膝に激しい痛みと腫れを引き起こすことがあります。ある日突然、足の親指の付け根に激痛が走るのが典型的ですが、膝関節に発症することも少なくありません。これは、関節内に尿酸の結晶が析出し、それを白血球が攻撃することで強烈な炎症が起きるためです。この診断と治療は、整形外科だけでなく、「リウマチ・膠原病内科」も専門としています。このように、膝の腫れは、単に水がたまっているだけではなく、その背景に様々な病気が隠れています。痛みに加えて腫れがある場合は、自己判断で湿布を貼って様子を見るのではなく、必ず整形外科を受診してください。