溶連菌感染症の治療後、一週間以上経ってから、再び発熱や発疹が現れた場合、ほとんどは薬疹や他のウイルス感染ですが、ごくごく稀に、最も警戒すべき合併症である「リウマチ熱」の可能性も、頭の片隅に置いておく必要があります。リウマチ熱は、溶連菌感染そのものではなく、感染をきっかけに体の免疫システムに異常が生じ、自分自身の体の組織、特に心臓や関節、神経などを誤って攻撃してしまう自己免疫疾患です。適切な治療を受けなかった場合、心臓の弁に障害が残る「リウマチ性心疾患」という、生涯にわたる後遺症を引き起こす可能性があるため、早期発見が非常に重要です。リウマチ熱は、通常、溶連菌感染症(咽頭炎)が治ってから、二週間から四週間後に発症します。その主な症状は、「発熱」「関節炎」「心炎」「不随意運動」「皮下結節」「輪状紅斑」です。このうち、「輪状紅斑(りんじょうこうはん)」が、発疹として現れる症状です。これは、輪っかのような、あるいは波紋のような形をした、少し盛り上がった赤い発疹で、主に体幹や手足の付け根あたりに出現します。痒みや痛みはなく、出たり消えたりを繰り返すのが特徴です。この輪状紅斑は、猩紅熱様発疹や薬疹とは明らかに見た目が異なります。そして、見分ける上で最も重要なのは、発疹以外の症状です。リウマチ熱の関節炎は、「移動性多発関節炎」と呼ばれ、膝、足首、肘、手首といった大きな関節が、次から次へと場所を移しながら、赤く腫れて激しく痛むのが特徴です。また、心炎を起こすと、動悸や息切れ、胸の痛みといった症状が現れます。これらのサインを見逃さないことが何よりも大切です。幸いなことに、現代の日本では、抗生物質による溶連菌治療が普及したため、リウマチ熱の発症は非常に稀になりました。しかし、可能性がゼロではない以上、知識として知っておくことは無駄ではありません。もし、溶連菌治療後に、発疹とともに関節の強い痛みや、心臓の異常を思わせる症状が現れた場合は、迷わず速やかに医療機関を受診してください。
溶連菌の合併症リウマチ熱の可能性とは