私の夫、健太は、週末になると少年野球のコーチとしてグラウンドを駆け回るのが趣味のアクティブな40歳です。その日も、試合で少し無理をしたのか、「スパイクで靴擦れしちゃったよ」と、かかとの小さな傷を見せてくれました。いつものことだと、消毒して絆創膏を貼っただけで、私たちはそのことをすっかり忘れていました。異変が起きたのは、その2日後の夜でした。健太が「なんだか足が痛くて、寒気がする」と言い出したのです。熱を測ると39度近くあり、靴擦れした方の足を見ると、足の甲から足首にかけて、赤紫色にパンパンに腫れあがっていました。触ると、まるで火傷したかのように熱く、健太は「ズキン、ズキンと脈打つように痛い」と顔をしかめています。ただ事ではない、と私たちは凍りつきました。夜間だったため、救急相談ダイヤルに電話をすると、症状から蜂窩織炎の可能性が強いとのことで、すぐに救急外来を受診するよう指示されました。病院での診察の結果、やはり診断は「重症の蜂窩織炎」。靴擦れの小さな傷から細菌が入り込み、皮下組織で一気に炎症が広がってしまったのだろう、とのことでした。そして、高熱と炎症の範囲が広いことから、即日入院となり、点滴による抗生物質の投与が開始されることになったのです。まさか、あの小さな靴擦れが、入院にまで至る事態になるとは、夢にも思っていませんでした。医師からは、もし治療が遅れていたら、細菌が血液に入り込んで敗血症という命に関わる状態になっていた可能性もあった、と聞き、私たちは改めて病気の恐ろしさに震えました。健太は一週間入院し、強力な抗生物質の点滴治療を受けました。幸い、治療の効果は高く、徐々に熱は下がり、足の腫れと痛みも引いていきました。退院後も、しばらくは飲み薬の抗生物質を続け、完全に回復するまでには約3週間かかりました。この一件は、私たちにとって大きな教訓となりました。どんなに小さな傷でも、甘く見てはいけないこと。そして、体の異常に気づいたら、躊躇なく専門家の助けを求めること。当たり前のことですが、その重要性を、私たちは身をもって学んだのです。
彼の足がパンパンに。蜂窩織炎と診断された日の恐怖