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上の子と妊婦、ヘルパンギーナの感染ループを断つ
妊娠中に、上の子がヘルパンギーナにかかってしまう。これは、経産婦さんにとって、まさに「あるある」とも言える、非常に悩ましい状況です。子供の看病はしなければならない、でも自分には絶対にうつりたくない。このジレンマの中で、家庭内の感染拡大、特に妊婦さんへの感染をいかに食い止めるかは、家族全員で取り組むべき重要な課題です。まず、家庭内の役割分担を工夫することができれば、それが最も効果的です。もし可能であれば、ヘルパンギーナの看病は、パートナーである父親や、同居する祖父母など、妊娠していない他の大人が主担当となるのが理想です。感染した子供との接触時間を物理的に減らすことが、最も確実な予防策だからです。しかし、現実的には母親が看病の中心とならざるを得ない家庭がほとんどでしょう。その場合は、感染対策のレベルを最大限に引き上げる必要があります。看病の際は、必ず不織布マスクを着用しましょう。子供が咳やくしゃみをしなくても、会話の中でウイルスは飛散します。そして、看病の前後、特に唾液や鼻水がついた可能性のあるものに触れた後や、オムツ替えの後は、徹底した手洗いを行います。石鹸を使い、三十秒以上かけて指先から手首まで丁寧に洗い流すことを習慣にしてください。また、ウイルスは環境表面でも数時間は生存できます。子供がよく触るドアノブ、テーブル、おもちゃなどは、次亜塩素酸ナトリウム系の消毒液や、アルコール(ウイルスの種類によっては効果が低い場合もあるが、やらないよりは良い)でこまめに拭き掃除をしましょう。食器やタオルの共用はもちろん厳禁です。そして、意外な感染源となるのが「お風呂」です。一緒に入浴すると、浴槽のお湯を介して感染するリスクがあります。可能であれば、子供が治るまでは別々に入るか、シャワーだけで済ませるなどの工夫をしましょう。最後に、看病する妊婦さん自身の免疫力を落とさないことも大切です。パートナーに協力を仰ぎ、少しでも睡眠時間を確保し、栄養のある食事を摂るように心がけてください。完璧に防ぐことは難しいかもしれませんが、これらの対策を一つひとつ丁寧に積み重ねることが、感染ループを断ち切る力となります。
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胸の痛みに潜む病気、最初に受診すべきは何科か
ある日突然、胸に痛みを感じた時、多くの人が「心臓の病気かもしれない」という、漠然とした、しかし強烈な不安に襲われることでしょう。その痛みは、ズキンとする鋭いものか、締め付けられるような圧迫感か。痛む場所は胸の中央か、左側か。症状は様々ですが、共通するのは「何科へ行けば良いのかわからない」という戸惑いです。この重大なサインを見逃さず、適切な医療に繋がるために、最初に選ぶべき診療科はどこなのでしょうか。その答えは、痛みの性質や伴う症状によって異なりますが、まず考慮すべきは「循環器内科」です。循環器内科は、心臓や血管の病気を専門とする診療科です。胸の痛みの原因として最も緊急性が高く、命に関わる可能性がある狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患の診断と治療を専門としています。特に、「胸の中央が締め付けられる、圧迫されるような痛み」「痛みが左肩や腕、顎に広がる(放散痛)」「冷や汗や息苦しさを伴う」といった症状は、心臓が発する危険なサインである可能性が高く、一刻も早く循環器内科を受診する必要があります。しかし、近所に循環器内科がない場合や、どの科に行けば良いか全く見当がつかない場合は、「一般内科」を受診するのが良いでしょう。内科医は、問診や聴診、心電図検査などを行い、症状の原因を幅広く探ってくれます。そして、心臓疾患が疑われれば専門の循環器内科へ、肺の病気が疑われれば呼吸器内科へ、消化器系の病気が疑われれば消化器内科へと、適切な専門科への橋渡し(紹介)をしてくれます。また、もし痛みが「チクチク、ズキズキ」といった表面的なもので、体を動かしたり、特定の場所を押したりすると痛みが強まる場合は、筋肉や骨、神経が原因である可能性も考えられます。この場合は、「整形外科」が専門となります。まずは、自分の痛みの特徴をよく観察すること。そして、少しでも心臓の病気を疑うような症状があれば、躊躇なく循環器内科、あるいは内科の扉を叩く勇気が、あなたの命を守ることに繋がるのです。