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整形外科か、それとも他の科?ばね指の病院選び
指の付け根が痛く、曲げ伸ばしの際にカクンと引っかかる。症状からして、おそらく「ばね指」だろう。そう見当がついた時、多くの人が「整形外科へ行けば良い」と理解はしていても、いざ病院を選ぶ段になると、「近所のクリニックで良いのか、大きな総合病院に行くべきか」「手の外科、というのもあるけれど、何が違うのだろう」といった、新たな疑問に直面します。ばね指の治療で後悔しないためには、症状の段階に合わせた適切な医療機関を選ぶことが大切です。まず、症状が比較的軽い初期の段階、つまり「指の付け根に痛みや違和感があるが、まだカクカクとした引っかかりは時々しか起こらない」というような場合は、お近くの「一般的な整形外科クリニック」で十分に対応が可能です。多くのクリニックでは、診断から投薬、そして炎症を抑えるためのステロイド注射(腱鞘内注射)まで、ばね指の保存的治療を一通り行うことができます。まずは、通いやすいクリニックで初期治療を開始するのが、最も現実的で良い選択と言えるでしょう。一方、「手の外科」や「手の外科専門医」という看板を掲げている医療機関は、より専門的な治療を求める場合に選択肢となります。「手の外科」は、整形外科の中でも特に、手や指、肘といった上肢の疾患を専門に扱う分野です。ばね指はもちろん、手根管症候群や、骨折、腱の断裂など、手に関するあらゆる病気やケガのエキスパートが集まっています。もし、ステロイド注射を数回行っても症状が改善しない場合や、手術を検討する段階になった時には、このような専門医に相談するのが安心です。特に、手術を受ける場合は、執刀経験が豊富な専門医を選ぶことが、良好な結果に繋がります。また、持病として「関節リウマチ」や「糖尿病」がある方の場合は、ばね指の症状が難治性であったり、感染のリスクが高かったりするため、これらの持病も合わせて管理してくれる、比較的大きな病院の整形外科や、リウマチ科と連携している施設を選ぶのが望ましいでしょう。まずは近所の整形外科から。そして、症状に応じて、より専門性の高い医療機関へとステップアップしていく。これが、ばね指の賢い病院選びの考え方です。
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妊娠後期にヘルパンギーナ、出産への影響は?
妊娠生活もいよいよ大詰め、出産を間近に控えた妊娠後期に、まさかのヘルパンギーナに感染してしまった。このタイミングでの感染は、妊婦さんにとって、また別の種類の不安をもたらします。陣痛が来た時に、この体調で乗り切れるのだろうか。そして何より、生まれてくる赤ちゃんに影響はないのだろうか。妊娠後期、特に出産直前の感染には、いくつかの注意点があります。まず、出産そのものへの影響です。ヘルパンギーナによる高熱や喉の痛み、倦怠感は、母体の体力を著しく奪います。お産は、フルマラソンに例えられるほどの体力勝負です。万全の体調で臨むのが理想ですが、感染症にかかった状態で陣痛が始まってしまうと、体力が続かずに「微弱陣痛」となり、お産が長引いてしまったり、吸引分娩や緊急帝王切開が必要になったりする可能性が、通常よりも高まることが考えられます。そのため、もし感染してしまったら、出産までに少しでも体力を回復できるよう、安静に努めることが何よりも大切です。次に、赤ちゃんへの感染リスクです。もし、分娩時に母親がウイルスを排出している状態だと、産道を通る際や、生まれた直後の密な接触を通じて、赤ちゃんにウイルスが感染してしまう「産後感染」のリスクがあります。新生児、特に生まれたばかりの赤ちゃんは免疫力が非常に弱いため、ヘルパンギーナに感染すると、稀ではありますが、髄膜炎や心筋炎といった重篤な合併症を引き起こす可能性もゼロではありません。そのため、出産時に母親がヘルパンギーナに罹患している場合、産院では、分娩時の感染対策をより厳重に行ったり、生まれた後の母子の接触(カンガルーケアなど)を一時的に制限したり、赤ちゃんを新生児室で注意深く観察したり、といった特別な対応が取られることがあります。これは、万が一のリスクから赤ちゃんを守るための最善策です。もし、臨月の時期にヘルパンギーナの症状が出た場合は、陣痛が来ていなくても、すぐにかかりつけの産婦人科に連絡し、状況を正確に伝えてください。事前に情報を共有しておくことで、産院側も万全の準備を整えることができ、母子共に最も安全なお産を迎えることができるのです。
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妊婦がヘルパンギーナ、薬は飲める?安全な対処法
妊娠中にヘルパンギーナにかかってしまった時、高熱や喉の激痛といったつらい症状を、ただひたすら我慢しなければならないのでしょうか。お腹の赤ちゃんへの影響を考えると、安易に薬を飲むことへの抵抗感は非常に大きいものです。しかし、症状を我慢しすぎることが、かえって母体や胎児に負担をかけることもあります。正しい知識を持ち、安全に対処することが重要です。まず、大前提として、妊娠中の服薬は、自己判断で絶対に行わないでください。市販の風邪薬や痛み止めの中には、妊娠中に使用すると胎児に影響を及ぼす可能性のある成分が含まれています。必ず、医師の診断のもと、処方された薬を服用するようにしましょう。ヘルパンギーナには、ウイルスそのものを退治する特効薬はありません。そのため、治療は症状を和らげる「対症療法」が中心となります。妊婦さんの場合、特に重要なのが「解熱剤」の使い方です。四十度近い高熱が長く続くと、母体の体力を著しく消耗させるだけでなく、妊娠初期においては胎児への影響も懸念されます。そのため、医師は比較的安全性が高いとされる「アセトアミノフェン」という成分の解熱鎮痛剤を処方することが一般的です。これにより、つらい高熱や頭痛、関節痛を和らげ、体力の消耗を防ぎます。喉の激痛に対しては、直接的な痛み止めを飲むことは難しいですが、うがい薬や、喉の炎症を抑えるスプレーなどが処方されることがあります。また、食事が全く摂れず、脱水症状の危険がある場合には、医療機関で点滴による水分・栄養補給が行われます。これは、母体と胎児の安全を守る上で非常に有効な治療法です。薬物治療と並行して、自宅でのセルフケアも回復を助けます。安静にして十分な休息をとること。痛みが少なく飲み込める、ゼリーやプリン、冷たいスープ、経口補水液などで、こまめに水分と栄養を補給すること。そして、部屋を加湿して喉の乾燥を防ぐこと。これらの地道なケアと、医師による安全な薬物治療を組み合わせることで、つらい症状を乗り切り、回復へと向かうことができるのです。
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なぜ女性に多い?ばね指の原因とホルモンの関係
ばね指は、指をよく使う人であれば誰にでも起こりうる病気ですが、統計的に見ると、明らかに女性、特に妊娠・出産期の女性や、更年期(四十代後半から五十代)の女性に多発する傾向があります。なぜ、特定のライフステージの女性が、ばね指になりやすいのでしょうか。その背景には、女性ホルモンの劇的な変化が、腱や腱鞘の状態に深く関わっていると考えられています。女性ホルモンの一つである「エストロゲン」には、腱や関節の周りにある滑膜という組織の腫れを抑え、炎症をコントロールする働きがあります。また、もう一つの女性ホルモンである「プロゲステロン」は、腱鞘の滑りを良くする役割を担っています。しかし、妊娠中や出産後は、この二つのホルモンのバランスが大きく変動します。特に、産後はエストロゲンの分泌が急激に減少し、腱や腱鞘が炎症を起こしやすく、むくみやすい状態になります。それに加えて、赤ちゃんを抱っこしたり、授乳したりと、これまでとは比べ物にならないほど手や指を酷使することになります。この「ホルモンバランスの乱れ」と「物理的な手の使いすぎ」という二つの要因が重なることで、産後の女性は非常にばね指を発症しやすくなるのです。同様に、更年期を迎えると、卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌量が大幅に減少します。これにより、全身の腱や関節がこわばりやすくなり、腱鞘炎のリスクが高まります。更年期障害の症状の一つとして、朝の手指のこわばりと共に、ばね指の症状を訴える女性は非常に多いのです。さらに、女性は男性に比べて、もともと筋力が弱く、家事などで手を使う機会が多いため、日常的に腱や腱鞘に負担がかかりやすいという土台もあります。このように、女性特有のホルモンの波と、ライフスタイルが、ばね指の発症に大きく影響しています。もし、あなたが妊娠・出産期や更年期に指の不調を感じたら、それは単なる気のせいや疲れではなく、ホルモンが関わる体の変化のサインかもしれません。我慢せずに、整形外科で専門的なアドバイスを受けることが大切です。
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そのしこり、甲状腺かも?耳鼻科と内分泌内科の連携
首のしこりに気づいて耳鼻咽喉科を受診した際、医師から「これは甲状腺の腫れのようですね。一度、専門の科で詳しく診てもらいましょう」と言われることがあります。この時に紹介されるのが、「内分泌内科」です。甲状腺は、喉仏のすぐ下にある、蝶が羽を広げたような形をした臓器で、体の新陳代謝を司る甲状腺ホルモンを分泌しています。この甲状腺に異常が起きると、しこり(結節)ができたり、全体が腫れたりすることがあります。耳鼻咽喉科と内分泌内科は、どちらも首周りを診る診療科ですが、その専門領域には明確な違いがあります。耳鼻咽喉科は、リンパ節や唾液腺、咽頭・喉頭といった「首の構造物」の病気を診断・治療する専門家です。一方、内分泌内科は、甲状腺や副甲状腺といった「ホルモンを分泌する臓器」の機能的な異常を診断・治療する専門家です。甲状腺のしこりの場合、その診断と治療には、この両方の視点が不可欠となるため、二つの科が密接に連携することが非常に重要になります。まず、耳鼻咽喉科や内科で首のしこりを指摘されると、超音波(エコー)検査が行われます。これにより、しこりの大きさや形、内部の性状がある程度わかります。そして、甲状腺の病気が疑われた場合、内分泌内科で血液検査を行い、甲状腺ホルモンの値を測定します。これにより、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)や、機能低下症(橋本病など)がないかを確認します。さらに、しこりが悪性(甲状腺がん)の疑いがある場合には、より精密な検査が必要になります。この時に行われるのが「穿刺吸引細胞診」です。これは、超音波でしこりの位置を確認しながら、細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で良性か悪性かを調べる検査です。この手技は、耳鼻咽喉科医や、経験豊富な内分泌内科医、あるいは病理医が行います。そして、もし手術が必要と診断された場合には、手術を担当する耳鼻咽喉科(あるいは甲状腺外科、頭頸部外科)に再びバトンが渡されます。このように、首のしこりの診療は、複数の専門家が連携プレーで行うチーム医療なのです。
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妊婦がヘルパンギーナにかかった時のつらい症状
ヘルパンギーナは、一般的に「子供の夏風邪」として知られ、比較的軽い病気というイメージがあります。しかし、これはあくまで子供の場合の話。免疫を持たない大人が、特に体力が落ちやすく、様々な変化に敏感になっている妊娠中に感染すると、子供とは比べ物にならないほど重く、つらい症状に見舞われることがあります。妊婦さんがヘルパンギーナにかかった場合、まず典型的に現れるのが、突然の「高熱」です。前触れもなく、悪寒と共に体温が急上昇し、三十九度から四十度近い高熱が二日から四日ほど続きます。ただでさえ体力を消耗しやすい妊娠中に、これほどの高熱に耐えるのは非常に過酷です。インフルエンザに似た、全身の関節痛や筋肉痛、強い倦怠感も伴い、起き上がっていることさえ困難になります。しかし、ヘルパンギーナの本当のつらさは、その後に現れる「喉の痛み」にあります。口の奥、特に上顎の軟口蓋や喉の入り口あたりに、複数の小さな水ぶくれ(小水疱)と、それが破れた後の口内炎(アフタ)ができます。この口内炎が、焼けるような、あるいは針で刺されるような激しい痛みを引き起こすのです。食事はもちろんのこと、水分を摂ること、さらには自分の唾液を飲み込むことさえ激痛に変わります。食べ物や飲み物が喉を通るたびに、あまりの痛みに涙が出るほどです。このため、食事が全く摂れなくなり、脱水症状に陥ってしまう危険性が非常に高まります。つわりで食事が思うように摂れていない妊婦さんにとっては、まさに泣きっ面に蜂の状態です。妊娠中は、使用できる薬にも制限があります。強い痛み止めや、口内炎に直接塗るステロイド軟膏なども、自己判断では使えません。高熱と激しい喉の痛み、そして栄養や水分が摂れないという三重苦。これが、妊婦さんがヘルパンギーナにかかった時のリアルな症状です。単なる子供の風邪だと侮らず、もし感染の疑いがある場合は、我慢せずに産婦人科医や内科医に相談し、少しでも症状を和らげるための適切な治療を受けることが、母体の安全を守る上で何よりも重要になります。
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女性特有の胸の痛み、何科を受診すべきか
胸の痛みを訴えて医療機関を受診する際、女性の場合は、男性とは少し異なる視点が必要になることがあります。ホルモンバランスの変化や、特有の疾患が、胸の痛みの原因となることがあるからです。まず、多くの女性が経験するのが、月経周期に関連した胸の痛みや張りです。これは、月経前に女性ホルモンのバランスが変動することで起こる「月経前症候群(PMS)」の症状の一つであり、乳腺が張ることで痛みとして感じられます。通常は月経が始まると軽快するため、周期性のある痛みであれば、過度に心配する必要はありません。気になる場合は、「婦人科」や「乳腺外科」に相談すると良いでしょう。また、更年期(おおむね四十五歳から五十五歳頃)の女性に起こる胸の痛みも注意が必要です。女性ホルモン(エストロゲン)の減少は、自律神経のバランスを乱し、動悸や息切れ、ほてり(ホットフラッシュ)と共に、胸の圧迫感や痛みを引き起こすことがあります。これは「更年期障害」の症状の一つとして考えられ、「婦人科」が主な相談先となります。しかし、ここで非常に重要なのが、更年期は心血管疾患のリスクが高まる時期でもある、という点です。これまで女性ホルモンによって守られてきた血管のしなやかさが失われ、狭心症や心筋梗塞を発症しやすくなるのです。そのため、更年期世代の女性が経験する胸の痛みは、「どうせ更年期だから」と自己判断せず、一度は必ず「循環器内科」で心臓の精密検査を受けておくことが強く推奨されます。心臓に異常がないことを確認した上で、婦人科でのホルモン補充療法などを検討するのが安全な順序です。さらに、乳房そのものの病気、例えば乳腺症や乳腺炎、あるいは乳がんなども、胸の痛みやしこりの原因となります。胸の表面に近い部分の痛みや、しこりを触れる場合は、「乳腺外科」を受診してください。このように、女性の胸の痛みは、婦人科、循環器内科、乳腺外科など、複数の診療科が関わってきます。まずは、自分の年齢や月経周期、痛みの性質をよく観察し、最も疑わしい科を受診するか、かかりつけの内科医に相談して、適切な専門科へ案内してもらうのが良いでしょう。
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膝の痛みと腫れ、その裏に隠された病気とは
膝の痛みに加えて、関節が熱を持ってパンパンに「腫れている」場合、それは膝の内部で何らかの強い「炎症」が起きているサインです。この腫れの原因を特定することが、適切な治療への鍵となります。整形外科を受診すると、医師はまず、その腫れが何によって引き起こされているのかを診断します。最も一般的な原因は、「関節液の過剰な分泌」です。変形性膝関節症や半月板損傷などによって、膝関節の内部に炎症が起きると、それを鎮めようとして、あるいは潤滑を保とうとして、関節を包む滑膜という組織から、通常よりも多くの関節液が分泌されます。これが、いわゆる「膝に水がたまる」状態(関節水腫)です。この場合、整形外科では、注射器で関節液を抜き取る「関節穿刺」を行うことがあります。関節液を抜くことで、圧迫による痛みが軽減され、また、抜いた液体の色や性状を調べることで、診断の大きな手がかりとなります。例えば、黄色く透明な液体であれば変形性膝関節症、血液が混じっていれば靭帯損傷や骨折などの外傷、白く濁っていれば感染や痛風が疑われます。次に、注意が必要なのが「感染」による腫れです。傷口などから細菌が関節内に侵入して起こる「化膿性膝関節炎」は、激しい痛みと腫れ、高熱を伴い、緊急で治療が必要な状態です。関節液は白く濁った膿(うみ)のようになり、放置すると関節が破壊されてしまうため、抗生物質の投与や、場合によっては手術による洗浄が必要となります。また、血液中の尿酸値が高い人がかかる「痛風発作」も、膝に激しい痛みと腫れを引き起こすことがあります。ある日突然、足の親指の付け根に激痛が走るのが典型的ですが、膝関節に発症することも少なくありません。これは、関節内に尿酸の結晶が析出し、それを白血球が攻撃することで強烈な炎症が起きるためです。この診断と治療は、整形外科だけでなく、「リウマチ・膠原病内科」も専門としています。このように、膝の腫れは、単に水がたまっているだけではなく、その背景に様々な病気が隠れています。痛みに加えて腫れがある場合は、自己判断で湿布を貼って様子を見るのではなく、必ず整形外科を受診してください。
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診療科選びで迷ったら、まずは総合内科という選択肢
胸が痛い。でも、心臓なのか、肺なのか、あるいは骨や筋肉なのか、全く見当がつかない。循環器内科や呼吸器内科といった専門科は、近所にはない。そんな時、多くの人が「何科に行けばいいのか」という最初のステップで立ち往生してしまいます。このような状況で、非常に頼りになるのが「総合内科(総合診療科)」という存在です。総合内科は、特定の臓器に限定せず、患者さんの症状を全身的な観点から幅広く診察し、問題の切り分け(トリアージ)を行うことを専門としています。いわば、体の不調に関する「最初の相談窓口」であり、「名探偵」のような役割を担う診療科なのです。胸の痛みを訴えて総合内科を受診すると、医師はまず、詳細な問診から始めます。痛みの性質、場所、持続時間、伴う症状などについて、患者さんの言葉にじっくりと耳を傾け、原因を探るためのヒントを集めます。そして、聴診、血圧測定といった基本的な身体診察に加え、心電図検査、胸部レントゲン検査、血液検査といった、胸の痛みの原因を探る上で必須となる初期検査を一通り行います。これらの診察と検査の結果を総合的に判断し、医師は診断の方向性を絞り込んでいきます。例えば、心電図に異常があれば、心筋梗塞や狭心症を疑い、直ちに院内の循環器内科医にコンサルト(相談)するか、循環器専門病院への緊急搬送を手配します。レントゲンで肺に影があれば、呼吸器内科へ。胃酸の逆流が疑われれば、消化器内科へ。骨や筋肉の問題と判断されれば、整形外科へ。このように、総合内科は、患者さんを最も適切な専門診療科へと繋ぐ「ハブ機能」を果たしてくれるのです。もちろん、症状が軽微で、特定の専門科での治療が必要ないと判断されれば、そのまま総合内科で経過観察や治療を行うこともあります。何科に行けば良いか分からず、医療へのアクセスをためらっている間に、病気が進行してしまうことほど、不幸なことはありません。そんな時は、まず「総合内科」という頼れる羅針盤を頼りに、一歩を踏み出してみてください。そこから、あなたの健康への正しい道筋が、きっと見えてくるはずです。
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風邪をひくと蕁麻疹が出るのはなぜ?その意外な関係
高熱や喉の痛み、咳といった典型的な風邪の症状に加えて、突然、体中に蚊に刺されたような赤い膨らみ(膨疹)が現れ、強い痒みに襲われる。そんな経験はありませんか。一見、無関係に思える「風邪」と「蕁麻疹」ですが、実はこの二つの症状は、私たちの体の中で起こっている免疫システムの働きによって、密接に結びついていることがあります。風邪をひいた時に蕁麻疹が出やすくなる主な理由は、風邪の原因であるウイルスや細菌そのものに対する「アレルギー反応」、あるいは、感染によって引き起こされる「免疫システムの過剰反応」にあります。私たちの体は、ウイルスなどの異物(抗原)が体内に侵入してくると、それを排除しようとして抗体を作り、免疫システムが活発に働きます。この免疫反応の過程で、皮膚にある「マスト細胞」という細胞が刺激されることがあります。マスト細胞は、内部にヒスタミンなどの化学伝達物質を蓄えており、刺激を受けると、このヒスタミンを放出します。放出されたヒスタミンは、皮膚の血管を広げて血液成分を漏れ出させ(これが膨疹の正体)、また、知覚神経を刺激して強い痒みを引き起こします。これが、アレルギー反応としての蕁麻疹のメカニズムです。つまり、風邪のウイルスが、アレルギーを引き起こすアレルゲンのように働いてしまうことがあるのです。また、感染症にかかると、体はサイトカインという物質を放出して免疫系全体を活性化させますが、このプロセスが過剰になると、マスト細胞が誤って刺激され、蕁麻疹が出やすくなることもあります。さらに、風邪をひくと、体調不良によるストレスや、解熱鎮痛剤などの薬の服用も、蕁麻疹の引き金となることがあります。このように、風邪という体にとっての非常事態は、様々な要因を通じて、皮膚の免疫バランスを崩し、蕁麻疹という形でSOSサインを発することがあるのです。それは、あなたの体が、目に見えない敵と懸命に戦っている証拠とも言えるのかもしれません。