かかとの痛みの原因と聞くと、多くの人が足底腱膜炎を思い浮かべますが、実は、かかとの痛みを引き起こす病気はそれだけではありません。整形外科で診察を受けても、足底腱膜炎とは診断されず、別の原因が見つかることも少なくないのです。ここでは、足底腱膜炎以外に考えられる、かかとの痛みの原因をいくつかご紹介します。まず、「踵部脂肪体炎(しょうぶしぼうたいえん)」です。私たちのかかとの骨の下には、衝撃を吸収するための厚い脂肪のクッション(脂肪体)があります。この脂肪体が、加齢によって弾力性を失ったり、繰り返される強い衝撃によって炎症を起こしたりすることで、痛みが生じる病気です。足底腱膜炎のように動き始めだけ痛むのではなく、立っている間や歩いている間、持続的にジンジンとした痛みを感じるのが特徴です。次に、特にスポーツをする人に多いのが、かかとの骨の「疲労骨折」です。ランニングやジャンプなど、同じ動作の繰り返しによって、かかとの骨に微細なひびが入ってしまう状態です。安静時には痛みがなくても、運動時や、かかとを押した時に強い痛みを感じます。レントゲンでは初期にはわかりにくく、MRIなどの精密検査で診断されることもあります。また、痛みの原因が骨や腱ではなく、「神経」にある場合もあります。「足根管症候群(そっこんかんしょうこうぐん)」は、足首の内側にある神経の通り道(足根管)で、神経が圧迫されることで、かかとや足の裏にしびれや痛みが広がる病気です。そして、忘れてはならないのが、関節リウマチや強直性脊椎炎といった「全身性の疾患」です。これらの自己免疫疾患では、全身の関節に炎症が起こりますが、その一環として、アキレス腱やかかとの骨の付着部に炎症が生じ、痛みを引き起こすことがあります。このように、かかとの痛みと一口に言っても、その原因は様々です。自己判断はせず、専門家である整形外科医に診てもらい、痛みの本当の原因を突き止めることが、適切な治療への第一歩となります。