-
溶連菌の後に皮膚がむけるのはなぜですか?
溶連菌感染症にかかり、熱と喉の痛み、そして全身の細かい赤い発疹(猩紅熱様発疹)を経験した後、ようやく症状が落ち着いてきた一週間後から二週間後にかけて、今度は手足の指先の皮膚が、まるで日焼けの後のように、薄くポロポロと剥けてきて驚いた、という経験を持つ方は少なくありません。これは「膜様落屑(まくようらくせつ)」と呼ばれる、溶連菌感染症の回復期に見られる特徴的な症状の一つです。発疹とはまた違うこの皮膚の変化に、病気がぶり返したのではないかと心配になるかもしれませんが、これは体が正常に回復している証拠なので、安心してください。なぜ、このような皮むけが起こるのでしょうか。それは、溶連菌が産生する「発赤毒(外毒素)」という毒素が関係しています。この毒素が、皮膚の表面にある角質層に作用し、軽い炎症を引き起こします。猩紅熱様発疹として現れたこの炎症が治癒していく過程で、ダメージを受けた古い角質が、新しい皮膚に押し上げられるようにして剥がれ落ちてくるのです。特に、皮膚の角質層が厚い手のひらや足の裏、指先で顕著に見られます。まるで薄い膜が一枚、ペラペラと剥けてくるような感じです。この落屑は、痛みもかゆみも伴わないことがほとんどです。無理に剥がそうとすると、まだ未熟な下の皮膚を傷つけてしまう可能性があるので、自然に剥がれ落ちるのを待ちましょう。特に治療は必要ありませんが、乾燥が気になる場合は、保湿クリームなどでケアしてあげると良いでしょう。落屑は、発疹が出てから一週間から三週間後くらいに始まり、二週間程度で自然に治まります。このように、溶連菌感染症は、発症中の症状だけでなく、回復期にも特徴的な皮膚の変化が見られる病気です。一週間後に発疹に似た皮むけを見つけても、慌てる必要はありません。それは、体がウイルスとの戦いに勝利し、新しい皮膚へと生まれ変わっている、喜ばしいサインなのです。
-
子供のかかとが痛い!成長期特有のシーバー病
「最近、子供が運動の後に、かかとを痛がることが多い」「特に思い当たる怪我もないのに、かかとが痛くて歩き方がおかしい」。もし、あなたの子供が小学校高学年から中学生くらいの、活発な成長期の男の子であれば、そのかかとの痛みの原因は「シーバー病(踵骨骨端症:しょうこつこったんしょう)」かもしれません。シーバー病は、大人の足底腱膜炎とは全く異なる、成長期の子供に特有の病気です。成長期の子供のかかとの骨には、まだ成長軟骨と呼ばれる、骨が成長していくための柔らかい部分が存在します。この成長軟骨は、構造的に弱く、繰り返しのストレスに弱いという特徴があります。サッカーやバスケットボール、陸上競技など、走ったりジャンプしたりする動作を繰り返すスポーツでは、ふくらはぎの筋肉が、アキレス腱を介してかかとの骨を強く引っ張ります。この引っ張る力が、弱い成長軟骨の部分に繰り返し加わることで、炎症や微細な損傷が生じ、痛みが発生するのです。いわば、成長とスポーツ活動のバランスが崩れた時に起こる、一種の「成長痛」とも言えます。痛みの特徴は、運動中や運動後に強く現れ、安静にしていると和らぐことです。かかとの後ろ側、アキレス腱の付け根あたりを押すと、強い痛みを感じます。つま先立ちになったり、かかとを地面につけたりする動作で痛みが誘発されるため、子供はかかとを浮かせるような歩き方をすることがあります。診断は、整形外科で症状や年齢、スポーツ歴などを聞き、レントゲン検査で他の骨の異常がないかを確認することで行われます。治療の基本は、痛みを引き起こしている原因、つまりスポーツ活動を一時的に休止または制限し、かかとへの負担を減らすことです。痛みが強い場合は、湿布や塗り薬を使用したり、かかとの衝撃を和らげるためのヒールカップなどのインソールを用いたりします。また、硬くなったふくらはぎの筋肉をほぐすためのストレッチも非常に重要です。シーバー病は、骨の成長が終われば自然に治る病気ですが、痛みを我慢して運動を続けると、症状を長引かせることになります。子供が痛みを訴えたら、無理をさせず、一度整形外科に相談することが大切です。
-
溶連菌の合併症リウマチ熱の可能性とは
溶連菌感染症の治療後、一週間以上経ってから、再び発熱や発疹が現れた場合、ほとんどは薬疹や他のウイルス感染ですが、ごくごく稀に、最も警戒すべき合併症である「リウマチ熱」の可能性も、頭の片隅に置いておく必要があります。リウマチ熱は、溶連菌感染そのものではなく、感染をきっかけに体の免疫システムに異常が生じ、自分自身の体の組織、特に心臓や関節、神経などを誤って攻撃してしまう自己免疫疾患です。適切な治療を受けなかった場合、心臓の弁に障害が残る「リウマチ性心疾患」という、生涯にわたる後遺症を引き起こす可能性があるため、早期発見が非常に重要です。リウマチ熱は、通常、溶連菌感染症(咽頭炎)が治ってから、二週間から四週間後に発症します。その主な症状は、「発熱」「関節炎」「心炎」「不随意運動」「皮下結節」「輪状紅斑」です。このうち、「輪状紅斑(りんじょうこうはん)」が、発疹として現れる症状です。これは、輪っかのような、あるいは波紋のような形をした、少し盛り上がった赤い発疹で、主に体幹や手足の付け根あたりに出現します。痒みや痛みはなく、出たり消えたりを繰り返すのが特徴です。この輪状紅斑は、猩紅熱様発疹や薬疹とは明らかに見た目が異なります。そして、見分ける上で最も重要なのは、発疹以外の症状です。リウマチ熱の関節炎は、「移動性多発関節炎」と呼ばれ、膝、足首、肘、手首といった大きな関節が、次から次へと場所を移しながら、赤く腫れて激しく痛むのが特徴です。また、心炎を起こすと、動悸や息切れ、胸の痛みといった症状が現れます。これらのサインを見逃さないことが何よりも大切です。幸いなことに、現代の日本では、抗生物質による溶連菌治療が普及したため、リウマチ熱の発症は非常に稀になりました。しかし、可能性がゼロではない以上、知識として知っておくことは無駄ではありません。もし、溶連菌治療後に、発疹とともに関節の強い痛みや、心臓の異常を思わせる症状が現れた場合は、迷わず速やかに医療機関を受診してください。
-
私がしつこいかかとの痛みを克服した話
私の朝は、憂鬱な一歩から始まっていました。ベッドから足を下ろし、床に最初の一歩を踏み出した瞬間、右のかかとに突き刺すような激痛が走るのです。まるで、ガラスの破片を踏んだかのようでした。その痛みは、四十代半ばを迎え、健康のためにと軽いジョギングを始めた数ヶ月後から、じわじわと私を蝕んでいきました。最初は、運動後の筋肉痛だろうと軽く考えていました。しかし、痛みは日を追うごとに強くなり、朝だけでなく、会議で長時間座った後に立ち上がる時にも、私を苦しめるようになりました。大好きだったジョギングも、痛みで楽しめなくなり、すっかり足が遠のいてしまいました。市販の湿布を貼っても、効果は一時的。このままでは歩けなくなるのではないか、という不安に駆られ、私はついに整形外科の門を叩きました。診察の結果、下された診断は「足底腱膜炎」。テレビや雑誌で聞いたことのある病名でしたが、まさか自分がなるとは思っていませんでした。医師は、加齢による柔軟性の低下と、急な運動が原因だろうと説明してくれました。そして、その日から、私の本格的な治療とリハビリが始まりました。処方されたのは、痛み止めの飲み薬と湿布。そして、理学療法士の指導のもと、徹底したストレッチを行うことでした。教わったのは、タオルを使って足裏を伸ばすストレッチと、壁を使ってアキレス腱を伸ばすストレッチ。毎日、朝晩、お風呂上がりに、痛くても歯を食いしばって続けました。また、普段履く革靴の中に、かかとを保護するインソールを入れるようにもしました。最初の二週間は、正直、あまり変化を感じませんでした。しかし、一ヶ月が経つ頃、ふと気づいたのです。朝の一歩目の、あの激痛が、少し和らいでいることに。それは、暗いトンネルの中に差し込んだ、一筋の光のようでした。それからは、ストレッチにも一層熱が入りました。三ヶ月後には、日常生活での痛みはほとんどなくなり、半年後には、恐る恐るですが、ジョギングを再開できるまでに回復しました。あの痛みは、私の体に「無理をするな」「自分の体をケアしろ」と教えてくれた、大切なサインだったのだと、今では思っています。
-
治ったはずの溶連菌の後に発疹が出たA君
小学二年生のA君は、高熱と喉の痛みで小児科を受診し、溶連菌感染症と診断されました。処方された抗生物質を十日間しっかりと飲み切り、すっかり元気になって学校にも復帰しました。ところが、最初の発症から二週間近く経ったある日、A君の腕や足に、赤いポツポツとした発疹が現れました。A君のお母さんは、「溶連菌が治りきっていなかったのでは」と心配になり、再び小児科を訪れました。医師はA君の体を診察しましたが、熱もなく、喉の赤みもありません。A君自身も、痒がる様子もなく、至って元気です。医師は、処方した薬による薬疹の可能性も考えましたが、発疹の出方やタイミングから、別の可能性を考えました。「もしかしたら、別のウイルスにも感染していたのかもしれませんね」。実は、子供の体は、短い期間に複数のウイルスや細菌に感染することが決して珍しくありません。特に、保育園や学校といった集団生活の場では、様々な感染症が常に流行しています。A君の場合も、溶連菌と戦って免疫力が少し落ちていたところに、たまたま別の、発疹を引き起こすウイルス(例えば、りんご病の原因となるパルボウイルスなど)にも感染し、その潜伏期間を経て、少し遅れて症状が出てきた可能性が考えられたのです。溶連菌の治療が終わったタイミングと、別のウイルスの発症のタイミングが偶然重なったことで、お母さんは「溶連菌の再発」と結びつけてしまったのです。このようなケースは、特に様々な感染症が流行する季節にはよく見られます。治療法は、原因となっているウイルスによって異なりますが、多くは自然に治癒するもので、特別な治療は必要ありません。このA君の事例が示すように、病気の症状は、必ずしも一つの原因だけで説明できるとは限りません。特に子供の場合、複数の要因が絡み合っていることも想定しておく必要があります。治療後に現れた新たな症状に戸惑った時は、思い込みで判断せず、これまでの経過を正確に医師に伝え、総合的に判断してもらうことが大切です。
-
溶連菌の回復期に出た発疹のホームケア
溶連菌感染症の治療から一週間後など、回復期に現れる発疹。その原因が薬疹であれ、他のウイルス感染であれ、子供にとってつらい症状の一つが「かゆみ」です。発疹そのものは時間とともに必ず治っていきますが、それまでの間、かゆみを少しでも和らげ、掻き壊しを防いであげるためのホームケアが重要になります。まず、最も大切なのは「掻かない、掻かせない」ことです。掻き壊してしまうと、そこから細菌が入り込んで二次感染を起こし、とびひになったり、痕が残ってしまったりする原因になります。子供の爪は常に短く、角が丸くなるように切っておきましょう。無意識に掻いてしまうのを防ぐため、夜寝る時には、薄手の綿の手袋をさせてあげるのも良い方法です。かゆみが強い部分を、冷たい水で濡らした清潔なタオルや、タオルで包んだ保冷剤などで優しく冷やしてあげると、一時的にかゆみが和らぎます。ただし、冷やしすぎには注意してください。次に入浴ですが、熱いお湯に浸かると、血行が良くなり、かえってかゆみが増してしまうことがあります。お風呂は避け、ぬるめのシャワーで汗や汚れをさっと洗い流す程度にしましょう。石鹸やボディソープは、低刺激性のものをよく泡立て、手で優しく撫でるように洗います。ナイロンタオルなどでゴシゴシ擦るのは厳禁です。シャワーの後は、柔らかいタオルで水分をそっと押さえるように拭き取ります。服装にも気を配りましょう。肌への刺激が少ない、ゆったりとした綿素材の衣類を選び、縫い目やタグが直接肌に当たらないように裏返して着せるなどの工夫も有効です。汗をかいたら、こまめに着替えさせて、肌を常に清潔で乾いた状態に保つことが大切です。もちろん、これらのホームケアと並行して、医師から処方されたかゆみ止めの飲み薬や塗り薬を正しく使うことが大前提です。家庭でのきめ細やかなケアが、子供の不快感を軽減し、皮膚をきれいに治すための大きな助けとなります。
-
息子の溶連菌一週間後に謎の発疹が出た話
あれは忘れもしない、五歳になる息子が溶連菌と診断されてからちょうど一週間が経った日のことでした。処方された抗生物質を真面目に飲み続け、高かった熱もすっかり下がり、喉の痛みも消えて、ようやく日常が戻ってきたと安堵していた矢先の出来事でした。お風呂上がりの息子の体を見て、私は思わず「えっ」と声を上げました。お腹や背中、そして腕や足にまで、赤くて少し盛り上がったような、今まで見たことのない発疹がびっしりと広がっていたのです。溶連菌の発疹は、熱と一緒に出るものだと聞いていたのに、なぜ今頃?治ったはずなのに、ぶり返してしまったのだろうか。それとも、何か別の怖い病気なのだろうか。私の頭の中は、不安でいっぱいになりました。翌朝、いてもたってもいられず、かかりつけの小児科へ駆け込みました。先生は、息子の全身の発疹をじっくりと見た後、私にこう尋ねました。「お薬、ちゃんと飲んでますか?」。私が「はい、言われた通り、昨日も飲みました」と答えると、先生は優しく微笑んで言いました。「これは、病気が悪化したんじゃなくて、お薬のアレルギー、薬疹ですね。溶連菌の治療で使う抗生物質で、時々こういう反応が出る子がいるんですよ」。薬疹。その言葉を聞いた瞬間、私は張り詰めていた緊張の糸が切れ、ほっとしました。病気が悪化したわけではなかったのです。先生は、原因となっていた抗生物質を中止し、かゆみを抑えるための抗アレルギー薬を処方してくれました。そして、「発疹はしばらくかかるかもしれないけど、必ず綺麗に消えるから心配しないでくださいね」と付け加えてくれました。その言葉通り、薬を変えてから数日経つと、あれだけひどかった発疹は少しずつ薄くなり、一週間ほどですっかり元の綺麗な肌に戻りました。この経験を通じて、私は子供の体の変化を自己判断することの怖さと、専門家である医師に相談することの大切さを、改めて痛感しました。治った後の予期せぬ症状に、同じように不安を感じる親御さんの、少しでも参考になればと思います。