風邪をひいた時に出る蕁麻疹。そのほとんどは、ウイルス感染に伴う一過性のもので、数日で自然に消えていきます。しかし、ごく稀に、その蕁麻疹の背後に、より深刻な全身性の病気が隠れている可能性も知っておく必要があります。「たかが蕁麻疹」と軽視していると、重要なサインを見逃してしまうことにもなりかねません。特に、風邪のような症状と蕁麻疹が同時に現れ、かつ、以下のような特徴が見られる場合は、注意が必要です。まず、「蕁麻疹が二十四時間以上、同じ場所にずっと出続けている」場合です。通常の蕁麻疹の膨疹は、数時間以内に出たり消えたりを繰り返すのが特徴です。もし、発疹が一日以上たっても全く同じ場所から移動せず、消えた後に少し紫がかったような跡が残る場合は、「蕁麻疹様血管炎(じんましんようけっかんえん)」という病気の可能性があります。これは、皮膚の細い血管に炎症が起きる病気で、自己免疫疾患(膠原病)などが背景にあることもあり、皮膚科やリウマチ・膠原病内科での精密検査が必要となります。次に、「蕁麻疹に加えて、高熱、関節の痛み、リンパ節の腫れ」といった症状が、長期間(数週間以上)にわたって続く場合です。これは、ウイルス感染が引き金となって発症する「成人スティル病」という、自己炎症性疾患の可能性が考えられます。これもリウマチ・膠原病内科が専門となります。また、風邪症状と共に現れた蕁麻疹が、何度も繰り返し、慢性化していく場合も注意が必要です。背景に、甲状腺疾患や、内臓の悪性腫瘍などが隠れており、それらが免疫系を異常に刺激して蕁麻疹を引き起こしているケースも、非常に稀ですが報告されています。これらの病気は、いずれも一般的な風邪に伴う蕁麻疹とは、その経過や症状の重さが異なります。もし、あなたの蕁麻疹が「なかなか消えない」「場所が移動しない」「関節痛など、皮膚以外の症状が強い」「何度も繰り返す」といった特徴を持つ場合は、安易に自己判断せず、一度、総合内科や皮膚科を受診し、詳しい検査について相談してみることをお勧めします。
その蕁麻疹、実は怖い病気のサインかも?