上の子が保育園からヘルパンギーナをもらってきた。高熱と口の痛みでつらそうにしている我が子を看病しながら、妊娠中のお母さんの頭をよぎるのは、「もし、自分にうつってしまったら、お腹の赤ちゃんは大丈夫だろうか」という強い不安でしょう。風疹やトキソプラズマのように、妊娠中の感染が胎児に深刻な影響を及ぼす病気があることを知っているからこそ、その心配は切実です。では、ヘルパンギーナは、妊婦さんとお腹の赤ちゃんにとって、どれほどのリスクがあるのでしょうか。結論から言うと、現在のところ、妊娠中に母親がヘルパンギーナに感染したことによって、胎児に奇形が生じたり、流産や死産のリスクが著しく高まったりするという明確な医学的エビデンスは報告されていません。ヘルパンギーナの原因となるエンテロウイルス属(主にコクサッキーウイルスA群)は、風疹ウイルスのように胎盤を通じて胎児に感染し、先天性の異常を引き起こす可能性は極めて低いと考えられています。この事実は、まず妊婦さんにとって大きな安心材料となるでしょう。しかし、だからといって「全く心配ない」と断言できるわけではありません。注意すべき点が二つあります。一つは、妊娠初期における高熱の影響です。ヘルパンギーナは、時に三十九度を超える高熱を引き起こします。妊娠のごく初期(特に四週から七週頃)に、母親が長時間高熱にさらされると、赤ちゃんの神経管閉鎖障害などのリスクがわずかながら上昇する可能性が指摘されています。そのため、もし感染してしまった場合は、自己判断で我慢せず、かかりつけの産婦人科医に相談し、妊婦でも安全に使える解熱剤を処方してもらうなど、適切に熱を管理することが重要です。もう一つの注意点は、出産直前の感染です。もし、出産間近の妊婦さんが感染すると、産道を通じて赤ちゃんにウイルスが感染し、生まれたばかりの新生児がヘルパンギーナを発症してしまう可能性があります。これらの点を踏まえ、過度に恐れる必要はありませんが、基本的な感染予防策を徹底し、もし感染した場合は速やかに主治医に相談するという姿勢が、母子共に健康な出産を迎えるために大切になります。
妊婦がヘルパンギーナに、お腹の赤ちゃんへの影響は?