膝の痛みと一言で言っても、その原因は年代によって大きく異なる傾向があります。ご自身の年齢と、痛みの特徴を照らし合わせることで、その背景にある病態をある程度推測することができます。まず、「若年層(十代~三十代)」に多い膝の痛みは、主に「スポーツ外傷・障害」に関連するものです。サッカーやバスケットボールなどで急な方向転換をした際に膝をひねって起こる「前十字靭帯損傷」や「半月板損傷」は、激しい痛みと腫れ、膝がガクッと崩れるような不安定感を伴います。また、ジャンプやダッシュを繰り返すことで、膝のお皿の周りに痛みが出る「ジャンパー膝」や、成長期の子供の膝下(脛骨)が痛くなる「オスグッド・シュラッター病」なども、この年代に特有のオーバーユース(使いすぎ)による障害です。これらの場合は、迷わず「整形外科」、特にスポーツ整形を専門とする医師に相談するのが良いでしょう。次に、「中年層(四十代~五十代)」になると、加齢による変化が少しずつ現れ始めます。これまで何のトラブルもなかった人でも、体重の増加や筋力の低下を背景に、膝の軟骨がすり減り始める「変形性膝関節症」の初期段階に入ることがあります。階段の上り下りや、立ち上がりといった動作の開始時に、膝の内側に痛みを感じるのが典型的なサインです。また、この年代の女性は、ホルモンバランスの変化などから、関節リウマチを発症することもあります。そして、「高齢層(六十代以降)」では、膝の痛みの原因として最も多いのが、進行した「変形性膝関節症」です。長年の負担によって膝の軟骨がすり減り、骨同士が直接こすれ合うことで、強い痛みや腫れ、関節の変形(O脚など)が生じます。歩くのが困難になったり、夜も痛みで眠れなかったりと、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。また、骨粗鬆症によって骨がもろくなっているため、軽い転倒でも膝周辺の骨折を起こしやすくなります。このように、膝の痛みの原因は、ライフステージと共に変化していきます。ご自身の年代に多い原因を参考にしつつも、自己判断はせず、専門家である整形外科医による正確な診断を受けることが何よりも大切です。
年齢で違う膝の痛みの原因、あなたはどのタイプ?