耳鼻咽喉科や内分泌内科で首のしこりを診察し、超音波(エコー)検査などを行った結果、悪性の可能性が少しでも疑われる場合や、良性か悪性かをはっきりさせる必要がある場合に、医師から提案されるのが「穿刺吸引細胞診(せんしきゅういんさいぼうしん)」という精密検査です。少し難しい名前ですが、これは診断を確定させる上で非常に重要な検査であり、外来で簡単に行うことができます。具体的には、一体どのような検査なのでしょうか。穿刺吸引細胞診は、超音波(エコー)でしこりの位置をリアルタイムで確認しながら、採血に使うのと同じくらいの非常に細い針をしこりに直接刺し、注射器で吸引して内部の細胞を少量採取するというものです。この手技により、手術で組織を大きく切り取ることなく、しこりを構成している細胞の顔つき(形態)を顕微鏡で詳しく調べることができ、それが良性細胞なのか、悪性細胞(がん細胞)なのかを高い精度で判断することが可能になります。検査にかかる時間は、準備も含めて十分から十五分程度です。ベッドに仰向けに寝た状態で行い、消毒をした後、医師がエコー画面を見ながら慎重に針を進めていきます。麻酔は、通常は必要ありません。採血の時と同じくらいの、チクッとした痛みを感じる程度です。細胞を吸引している間は、唾を飲み込まないようにするなどの協力が必要になることもあります。採取が終わったら、数分間、穿刺した部分を圧迫して止血し、小さな絆創膏を貼って終了です。検査当日は、激しい運動や飲酒は控えるように指示されますが、入浴や食事は普段通りで問題ありません。採取した細胞は、専門の病理医によって染色され、顕微鏡で詳細に観察されます。そのため、最終的な診断結果が出るまでには、通常一週間から二週間ほどの時間が必要です。もちろん、針を刺すことへの不安はあると思いますが、この検査は、不要な手術を避け、早期に的確な治療方針を決定するために、非常に有益で、体への負担が少ない優れた検査法なのです。