胸に感じる痛みが、締め付けられるような圧迫感ではなく、「チクチク」「ズキズキ」といった、比較的表面に近い、鋭い痛みである場合、それは心臓以外の原因によるものである可能性が高いと考えられます。このような痛みは、命に別状のないものがほとんどですが、不快な症状が続く場合は、原因を特定して適切に対処することが大切です。では、どのような病気が考えられるのでしょうか。まず、最も頻度が高いのが、肋骨の周りの筋肉や骨、神経に由来する痛みです。例えば、激しい咳が続いた後に起こる「肋間筋の筋肉痛」や「肋骨疲労骨折」。あるいは、肋骨と胸骨をつなぐ軟骨に炎症が起きる「肋軟骨炎(ティーツェ病)」も、胸の特定の場所を押すと強い痛み(圧痛)が生じるのが特徴です。また、ストレスや疲労が引き金となり、肋骨に沿って走る神経が痛む「肋間神経痛」も、電気が走るような鋭い痛みを引き起こします。これらの場合は、「整形外科」が専門の診療科となります。次に、皮膚の病気である「帯状疱疹」も忘れてはなりません。過去に水ぼうそうにかかったことのある人の体内に潜んでいたウイルスが、免疫力の低下をきっかけに再活性化し、神経に沿ってピリピリとした痛みを引き起こします。通常は、痛みの数日後に赤い発疹と水ぶくれが現れますが、痛みだけが先行することもあり、診断が難しい場合があります。これは「皮膚科」の領域です。また、消化器系のトラブルも胸の痛みの原因となります。胃酸が食道に逆流して炎症を起こす「逆流性食道炎」は、「胸やけ」として知られていますが、人によっては胸の痛みとして感じることもあります。食後や横になった時に症状が悪化するのが特徴で、この場合は「消化器内科」を受診します。さらに、精神的なストレスや不安が原因で、心臓には異常がないにもかかわらず胸の痛みや動悸、息苦しさを感じる「心臓神経症」という状態もあります。これは「心療内科」の領域です。このように、チクチク、ズキズキする胸の痛みは、その背景に様々な原因が隠れています。まずは「内科」を受診し、危険な病気がないことを確認した上で、症状に合わせて適切な専門科を紹介してもらうのが良いでしょう。
チクチク、ズキズキする胸の痛み、考えられる原因