胸が痛くて病院へ行き、心電図やレントゲン、血液検査など、一通りの検査を受けたけれど、「特に異常はありませんね」と言われてしまった。危険な病気ではなかったことに安堵する一方で、「では、この不快な痛みの原因は一体何なのだろう」と、スッキリしない気持ちを抱えている方はいらっしゃいませんか。その症状、もしかしたら「心臓神経症」かもしれません。心臓神経症とは、心臓そのものには器質的な病気がないにもかかわらず、胸の痛みや動悸、息切れ、めまいといった、あたかも心臓病のような症状が現れる状態のことを指します。主に、精神的なストレスや不安、過労、睡眠不足などが引き金となって、心臓の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れることで起こると考えられています。いわば、「心の不調」が「体の症状」として現れている状態です。心臓神経症による胸の痛みの特徴は、狭心症などとは異なり、比較的狭い範囲で「チクチク」「ズキズキ」とした痛みを感じることが多く、痛みの場所が移動したり、数秒で消えたり、逆に何時間も続いたりと、症状が一定しない傾向があります。また、安静にしている時に症状が出やすく、何かに集中していると忘れている、といったこともよくあります。この病気で大切なのは、まず循環器内科などで精密検査を受け、「心臓に危険な病気はない」ということを明確に診断してもらうことです。この「お墨付き」を得ること自体が、患者さんの不安を和らげ、症状の改善に繋がる大きな一歩となります。その上で、症状が続く場合は、「心療内科」や「精神科」が専門の診療科となります。心療内科では、カウンセリングを通じてストレスの原因を探ったり、自律神経のバランスを整えるための生活指導を行ったりします。また、症状が強い場合には、不安を和らげるための抗不安薬や、自律神経の機能を調整する薬などが処方されることもあります。胸の痛みは、必ずしも体の病気だけが原因ではありません。心が発するSOSサインである可能性も視野に入れ、適切な専門家を頼ることが、つらい症状からの解放に繋がるのです。
ストレスが原因?心臓神経症と胸の痛み