朝、指がこわばって動かしにくい。指の関節が痛む。これらの症状は、ばね指と関節リウマチの両方に見られることがあるため、時に混同されることがあります。しかし、この二つは全く異なる病気であり、治療法も全く異なります。正しい治療を受けるためには、その違いを理解しておくことが重要です。まず、「ばね指」は、指を曲げる腱と、それを通すトンネルである腱鞘との間で起こる、機械的な摩擦による「腱鞘炎」です。そのため、症状の主役は「指の付け根の痛み」と「曲げ伸ばしの際の引っかかり(弾発現象)」です。痛みや腫れは、基本的にトラブルが起きている一本の指の付け根に限定されます。一方、「関節リウマチ」は、免疫システムの異常によって、自分自身の関節を攻撃してしまう「自己免疫疾患」です。全身の様々な関節に炎症が起き、放置すると骨や軟骨が破壊され、関節が変形してしまう病気です。リウマチによる指の症状の特徴は、「複数の関節が、左右対称に腫れて痛む」ことです。特に、指の第二関節(PIP関節)や、指の付け根の関節(MCP関節)に症状が出やすい傾向があります。また、ばね指の症状の中心が「腱」であるのに対し、リウマチは「関節そのもの」の炎症です。そして、最も大きな違いが「朝のこわばり」の持続時間です。ばね指でも朝に指が動かしにくいことはありますが、しばらく動かしているうちに改善することがほとんどです。しかし、関節リウマチの朝のこわばりは、通常三十分から一時間以上と、非常に長く続くのが特徴です。もし、あなたの指の痛みが、一本の指の付け根だけでなく、複数の指の関節に及び、特に朝の強いこわばりを伴う場合は、ばね指ではなく関節リウマチの可能性を考える必要があります。その場合の専門診療科は、整形外科の中でも特に「リウマチ科」を標榜している医療機関や、「リウマチ・膠原病内科」となります。血液検査などで診断を確定し、早期に適切な治療を開始することが、関節の変形を防ぐために何よりも重要です。
ばね指とリウマチ、似ているけど違う指の痛み