朝、目が覚めて指を動かそうとした時、あるいは、物を持とうとして指を曲げた時、指の付け根に痛みが走り、カクンと引っかかるような、まるでバネが弾けるような感覚に襲われる。この不快な症状こそが、「ばね指(弾発指)」の典型的なサインです。一度この症状を経験すると、「これは何だろう、放っておいて大丈夫なのか」「病院へ行くなら、何科が専門なのだろう」と、様々な不安が頭をよぎることでしょう。この問いに対する最も的確な答えは、ばね指は骨や腱、関節の病気であるため、その専門家である「整形外科」を受診することです。整形外科は、運動器、つまり体を動かすことに関わる骨、関節、靭帯、腱、神経、筋肉などの病気やケガを診断・治療する診療科です。ばね指は、指を曲げるための「腱」と、その腱が浮き上がらないように押さえているトンネル状の組織「腱鞘(けんしょう)」との間で炎症が起きる「腱鞘炎」の一種です。指の使いすぎなどによって腱や腱鞘が腫れると、腱がスムーズにトンネルを通過できなくなり、引っかかりが生じてしまうのです。整形外科医は、問診と簡単な触診で、この特徴的な引っかかり(弾発現象)を確認し、多くの場合、その場ですぐにばね指の診断を下すことができます。そして、症状の重さや患者さんの希望に応じて、安静の指導、湿布や塗り薬の処方、あるいは炎症を強力に抑えるためのステロイド注射、さらにはリハビリテーションといった、様々な治療の選択肢を提示してくれます。もし、症状が改善せず、日常生活に大きな支障が出ている場合には、腱鞘を少しだけ切開して腱の通り道を広げる、という日帰りで可能な簡単な手術についても相談することができます。指の痛みや違和感は、日常生活の質を大きく低下させます。自己判断でマッサージをしたり、痛みを我慢して指を使い続けたりすると、症状が悪化するだけです。指のカクカクとした引っかかりに気づいたら、迷わず運動器の専門家である「整形外科」の扉を叩いてください。