胸の痛みに加えて、「息が苦しい」「息が吸えない」といった呼吸困難の症状が伴う場合、それは体からの極めて重要な警告サインであり、迅速な対応が求められます。この症状の組み合わせは、心臓や肺の重篤な病気の可能性を示唆しており、迷わず専門の医療機関を受診する必要があります。では、どの診療科を目指すべきなのでしょうか。まず、最も緊急性が高く、見逃してはならないのが、心臓の病気です。特に「心筋梗塞」や「急性心不全」では、心臓のポンプ機能が著しく低下するため、肺に血液がうっ血し、強い胸の痛みと共に、溺れるような息苦しさが現れます。この場合は、一刻も早く「循環器内科」を受診するか、救急車を要請しなければなりません。また、肺の血管に血の塊(血栓)が詰まる「肺血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)」も、突然の胸の痛みと呼吸困難を引き起こす、命に関わる病気です。長時間同じ姿勢でいた後などに発症しやすく、これも循環器内科や呼吸器内科での緊急治療が必要です。次に、肺そのものの病気も考えられます。肺に穴が空いて空気が漏れ、肺がしぼんでしまう「気胸」は、特に痩せ型の若い男性に多く、突然の胸の痛みと息苦しさが特徴です。また、細菌やウイルスによって肺に炎症が起きる「肺炎」や、肺を包む膜に炎症が広がる「胸膜炎」も、咳や発熱と共に、深呼吸をすると響くような胸の痛みと息苦しさを伴います。これらの肺疾患の専門は、「呼吸器内科」です。このように、息苦しさを伴う胸の痛みは、循環器系と呼吸器系の両方の病気が考えられ、いずれも緊急性が高いことが多いのが特徴です。どちらの科か判断に迷う場合や、かかりつけ医がいない場合は、まずは総合的な診察が可能な「総合内科」や「救急外来」を受診するのが賢明です。そこで、心電図やレントゲン、血液検査などを行い、原因を迅速に特定し、必要に応じて専門の診療科へ引き継いでくれます。「少し様子を見よう」という自己判断が、最も危険な選択であることを、強く認識しておきましょう。