三十代半ばを過ぎたある朝、髭を剃っている時に、右の顎の下あたりに、パチンコ玉くらいの大きさのしこりがあることに気づきました。触ると少し弾力があり、コロコロと動きます。痛みは全くありません。最初はニキビか何かだろうと気にも留めていませんでしたが、一週間経っても、二週間経っても、しこりは消えるどころか、少し大きくなったような気さえします。「これは何だろう…」。インターネットで「首のしこり」と検索すると、リンパ節の腫れから悪性腫瘍まで、様々な病名が並び、私の不安は一気に増大しました。悩んだ末、私はまず、首周りの専門家である「耳鼻咽喉科」のクリニックを受診することに決めました。診察室に入ると、医師は私の話をじっくりと聞いた後、「では、首を触らせてくださいね」と、しこりのある場所だけでなく、首全体を丁寧に触診しました。そして、「口の中と喉も見てみましょう」と、鼻から細いファイバースコープを挿入しました。モニターには、自分の喉の奥の映像が映し出され、少し不思議な感覚でしたが、痛みはほとんどありませんでした。医師は、「喉や声帯には、特に異常はありませんね」と説明してくれました。次に、隣の検査室に移動し、「超音波(エコー)検査」を受けました。首に冷たいゼリーを塗られ、技師さんが機械を当てていきます。モニターには、白黒の画像が映し出され、しこりの大きさや形、内部の様子が詳しく観察されていました。全ての検査が終わって再び診察室に戻ると、医師はエコーの画像を見せながら、こう説明してくれました。「このしこりは、大きさ約1.5センチのリンパ節です。形もきれいで、悪い所見はありません。おそらく、少し前にひいた風邪か何かの影響で、反応性に腫れているものでしょう。しばらく様子を見て、もし大きくなるようなら、また来てください」。その言葉に、私は心の底から安堵しました。原因がわかり、専門家から「大丈夫」と言ってもらえたことで、数週間にわたる重い不安から、ようやく解放された瞬間でした。迷ったら、まず専門家に見てもらう。その大切さを痛感した体験でした。