首のしこりに気づいて耳鼻咽喉科を受診した際、医師から「これは甲状腺の腫れのようですね。一度、専門の科で詳しく診てもらいましょう」と言われることがあります。この時に紹介されるのが、「内分泌内科」です。甲状腺は、喉仏のすぐ下にある、蝶が羽を広げたような形をした臓器で、体の新陳代謝を司る甲状腺ホルモンを分泌しています。この甲状腺に異常が起きると、しこり(結節)ができたり、全体が腫れたりすることがあります。耳鼻咽喉科と内分泌内科は、どちらも首周りを診る診療科ですが、その専門領域には明確な違いがあります。耳鼻咽喉科は、リンパ節や唾液腺、咽頭・喉頭といった「首の構造物」の病気を診断・治療する専門家です。一方、内分泌内科は、甲状腺や副甲状腺といった「ホルモンを分泌する臓器」の機能的な異常を診断・治療する専門家です。甲状腺のしこりの場合、その診断と治療には、この両方の視点が不可欠となるため、二つの科が密接に連携することが非常に重要になります。まず、耳鼻咽喉科や内科で首のしこりを指摘されると、超音波(エコー)検査が行われます。これにより、しこりの大きさや形、内部の性状がある程度わかります。そして、甲状腺の病気が疑われた場合、内分泌内科で血液検査を行い、甲状腺ホルモンの値を測定します。これにより、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)や、機能低下症(橋本病など)がないかを確認します。さらに、しこりが悪性(甲状腺がん)の疑いがある場合には、より精密な検査が必要になります。この時に行われるのが「穿刺吸引細胞診」です。これは、超音波でしこりの位置を確認しながら、細い針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で良性か悪性かを調べる検査です。この手技は、耳鼻咽喉科医や、経験豊富な内分泌内科医、あるいは病理医が行います。そして、もし手術が必要と診断された場合には、手術を担当する耳鼻咽喉科(あるいは甲状腺外科、頭頸部外科)に再びバトンが渡されます。このように、首のしこりの診療は、複数の専門家が連携プレーで行うチーム医療なのです。
そのしこり、甲状腺かも?耳鼻科と内分泌内科の連携