胸が痛い。でも、心臓なのか、肺なのか、あるいは骨や筋肉なのか、全く見当がつかない。循環器内科や呼吸器内科といった専門科は、近所にはない。そんな時、多くの人が「何科に行けばいいのか」という最初のステップで立ち往生してしまいます。このような状況で、非常に頼りになるのが「総合内科(総合診療科)」という存在です。総合内科は、特定の臓器に限定せず、患者さんの症状を全身的な観点から幅広く診察し、問題の切り分け(トリアージ)を行うことを専門としています。いわば、体の不調に関する「最初の相談窓口」であり、「名探偵」のような役割を担う診療科なのです。胸の痛みを訴えて総合内科を受診すると、医師はまず、詳細な問診から始めます。痛みの性質、場所、持続時間、伴う症状などについて、患者さんの言葉にじっくりと耳を傾け、原因を探るためのヒントを集めます。そして、聴診、血圧測定といった基本的な身体診察に加え、心電図検査、胸部レントゲン検査、血液検査といった、胸の痛みの原因を探る上で必須となる初期検査を一通り行います。これらの診察と検査の結果を総合的に判断し、医師は診断の方向性を絞り込んでいきます。例えば、心電図に異常があれば、心筋梗塞や狭心症を疑い、直ちに院内の循環器内科医にコンサルト(相談)するか、循環器専門病院への緊急搬送を手配します。レントゲンで肺に影があれば、呼吸器内科へ。胃酸の逆流が疑われれば、消化器内科へ。骨や筋肉の問題と判断されれば、整形外科へ。このように、総合内科は、患者さんを最も適切な専門診療科へと繋ぐ「ハブ機能」を果たしてくれるのです。もちろん、症状が軽微で、特定の専門科での治療が必要ないと判断されれば、そのまま総合内科で経過観察や治療を行うこともあります。何科に行けば良いか分からず、医療へのアクセスをためらっている間に、病気が進行してしまうことほど、不幸なことはありません。そんな時は、まず「総合内科」という頼れる羅針盤を頼りに、一歩を踏み出してみてください。そこから、あなたの健康への正しい道筋が、きっと見えてくるはずです。