私は、昔から年に一度か二度は必ず風邪をひく、ごく普通の体質です。しかし、私の風邪には、少し変わった特徴があります。それは、喉の痛みから始まる特定のタイプの風邪をひいた時だけ、必ずと言っていいほど、全身に蕁麻疹が出るのです。それは、決まって発熱して二日目の夜に始まります。最初は、お腹や背中のあたりにポツポツと赤い膨らみが現れ、それがみるみるうちに繋がり、地図のような形になって全身に広がっていきます。そして、尋常ではない痒みが襲ってくるのです。まるで、何千匹もの蚊に一斉に刺されたかのような、内側から湧き上がってくるような痒み。あまりの痒さに、夜も眠れず、ただひたすら体を掻きむしりたい衝動と戦うことになります。初めてこの症状を経験したのは、二十代の頃でした。高熱と蕁mA疹にパニックになり、夜間救急に駆け込みました。医師の診断は、「ウイルス性感染症に伴う急性蕁麻疹」。風邪のウイルスがアレルゲンのように働いて、アレルギー反応が起きているのだろう、という説明でした。抗ヒスタミン薬の注射をしてもらい、飲み薬を処方されて帰宅。その後、風邪が治ると共に、蕁麻疹も嘘のように引いていきました。それ以来、同じような喉の痛みから始まる風邪をひくと、私は「ああ、また出るな」と覚悟するようになりました。不思議なことに、鼻水や咳から始まる風邪の時には、全く蕁麻疹は出ません。おそらく、私の体は、特定の種類のウイルスに対してだけ、アレルギー反応を起こしやすい体質なのでしょう。今では、その「いつもの風邪」の兆候を感じたら、悪化する前に内科を受診し、事情を説明して、あらかじめ抗ヒスタミン薬を処方してもらうようにしています。早めに薬を飲み始めることで、蕁麻疹が出たとしても、その規模や痒みをかなり抑えることができるようになりました。この経験を通じて、私は自分の体の「癖」を知ることの大切さを学びました。自分の体と対話し、パターンを把握することで、予測し、備えることができる。それは、やみくもに不安がるよりも、ずっと賢明な付き合い方なのだと、今では思っています。