指の付け根の痛みや、軽い引っかかりを感じ始めたばね指の初期段階であれば、医療機関での治療と並行して、自宅でできるセルフケアを取り入れることで、症状の改善や悪化の予防が期待できます。特に、腱や筋肉の柔軟性を高めるストレッチは有効な手段の一つです。しかし、やり方を間違えると、かえって症状を悪化させてしまう可能性もあるため、注意点をよく理解した上で、慎重に行いましょう。ばね指に推奨される代表的なストレッチは、指を曲げる「屈筋腱」と、その周りの筋肉を優しく伸ばすものです。簡単な方法としては、まず、痛む方の手のひらを上に向け、反対側の手を使って、ばね指になっている指を手首の方へ、ゆっくりと優しく反らせていきます。「痛いけど気持ちいい」と感じる程度で止め、十五秒から三十秒ほどキープします。これを数回繰り返します。この時、絶対に無理やり強く反らせたり、反動をつけたりしてはいけません。強い痛みを感じる場合は、炎症が悪化するだけなので、すぐに中止してください。また、指を伸ばす「伸筋腱」とのバランスを取ることも大切です。テーブルなどの平らな面に手のひらを置き、指をできるだけまっすぐに伸ばした状態を保つ、というストレッチも効果的です。日常生活の中では、指の曲げ伸ばしだけでなく、指を一本一本開いたり閉じたりする「パー」と「グー」の運動を、ゆっくりと行うのも良いでしょう。そして、ストレッチ以上に重要なのが、「温める」ことです。指の使いすぎで炎症が起きている急性期は冷やすのが基本ですが、症状が慢性化し、朝のこわばりなどが気になる場合は、入浴中や、蒸しタオルなどで手を温めながらストレッチを行うと、血行が良くなり、腱や筋肉がほぐれやすくなります。ただし、これらのセルフケアは、あくまで症状の緩和や予防を目的としたものであり、根本的な治療ではありません。ストレッチをしても痛みが改善しない、あるいは引っかかりがひどくなる場合は、腱鞘の炎症がかなり進行しているサインです。自己判断でケアを続けず、必ず整形外科を受診し、専門医の診断と治療方針に従ってください。