ある日突然、胸に痛みを感じた時、多くの人が「心臓の病気かもしれない」という、漠然とした、しかし強烈な不安に襲われることでしょう。その痛みは、ズキンとする鋭いものか、締め付けられるような圧迫感か。痛む場所は胸の中央か、左側か。症状は様々ですが、共通するのは「何科へ行けば良いのかわからない」という戸惑いです。この重大なサインを見逃さず、適切な医療に繋がるために、最初に選ぶべき診療科はどこなのでしょうか。その答えは、痛みの性質や伴う症状によって異なりますが、まず考慮すべきは「循環器内科」です。循環器内科は、心臓や血管の病気を専門とする診療科です。胸の痛みの原因として最も緊急性が高く、命に関わる可能性がある狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患の診断と治療を専門としています。特に、「胸の中央が締め付けられる、圧迫されるような痛み」「痛みが左肩や腕、顎に広がる(放散痛)」「冷や汗や息苦しさを伴う」といった症状は、心臓が発する危険なサインである可能性が高く、一刻も早く循環器内科を受診する必要があります。しかし、近所に循環器内科がない場合や、どの科に行けば良いか全く見当がつかない場合は、「一般内科」を受診するのが良いでしょう。内科医は、問診や聴診、心電図検査などを行い、症状の原因を幅広く探ってくれます。そして、心臓疾患が疑われれば専門の循環器内科へ、肺の病気が疑われれば呼吸器内科へ、消化器系の病気が疑われれば消化器内科へと、適切な専門科への橋渡し(紹介)をしてくれます。また、もし痛みが「チクチク、ズキズキ」といった表面的なもので、体を動かしたり、特定の場所を押したりすると痛みが強まる場合は、筋肉や骨、神経が原因である可能性も考えられます。この場合は、「整形外科」が専門となります。まずは、自分の痛みの特徴をよく観察すること。そして、少しでも心臓の病気を疑うような症状があれば、躊躇なく循環器内科、あるいは内科の扉を叩く勇気が、あなたの命を守ることに繋がるのです。
胸の痛みに潜む病気、最初に受診すべきは何科か